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いつでも真剣な暖人は、何十年先の未来のことも真剣に考えて、げっそりとやつれた顔をした。それに思わず笑う。笑わずにはいられない。だって自分が幸せだって心の底から思うから、そんな時ってやっぱり笑顔しか浮かべれないでしょ、それが当たり前で自然なことでしょ。暖人が好きって、その感情が息をするくらい当然のことなんだよ。分かるかな、分かって欲しい。
「ほら、おいで」
「今日はなんだかイケメンですね、奏音さん」
「つべこべ言ってないで来なさいよ」
「キャラもなんか違くないですか」
蜜が零れ落ちそうなほど甘い笑みを浮かべて、暖人は私の胸に飛び込む、……ではなく、私の腕を引っ張って自分の胸に引き寄せた。
「ダメだー、今日もきっと抱いてしまうー」
「え、しないつもりだったの」
「毎日のように盛ってたらさすがに奏音に拒否されるかと思って……」
「じゃあやめよっか」
「ひどいこの女ー」
「ふふふ」
胸がぽかぽか、耳がくすぐったい。とくとくと鳴る暖人の心臓がかわいくてとにかく近くにいたくて擦り寄った。自分と同じ香り、分かち合う体温、ねえ、こんなの、一生飽きるわけないでしょ?
未だに悶々とし続ける暖人に、意地悪で聞こえないくらいの小さな声で「大好きだよ」と囁いた。絶対聞こえないと思ってたのに、「うっ」と苦しげな声が聞こえたので思わず笑った。耳いいなあ、ほんと。
直接目を見て、真っ直ぐ見つめて、そうして伝えよう。
私達の倦怠期は、きっと100年経っても訪れない。
みたされる心、その渇望 fin.
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