164人が本棚に入れています
本棚に追加
うざったい恋情、その先へ
「やい、暖人」
「ちょっと顔かしな」
ずずっと麺をすすりながら言われたもんだから、危うく気管に入りそうになった。味を評価するとそんな美味しくない、腹を満たすためだけの安いラーメン咀嚼しながら視線を向ければ、いつも仲良くしてるメンツ、というかだる絡みの頻度の高い女子達が俺を見下ろしていた。
「……俺の長所顔しかないんだから、すぐ返せよ」
「知ってるよ。今日もあんたの顔はかっこいいよ」
「じゃあここお邪魔させてもらうわ」
向かいの席に座り始めたそいつらのために、食べていたラーメンをとりあえず放置した。なに、と問いかければ険しい顔で1人が口を開く。
「……あんた奏音にまで手出したの？」
「……」
奏音。その名前を聞くと相変わらず心臓がぎゅっと締め付けられる。薄々予感はしていた。こうしてわざわざ俺の元へこいつらが来るのは十中八九彼女のことだと。
「……手を出してないと言えば嘘になるし」
「……」
「……いや、出したというか出されたというか、結局出したんだけど」
「どっちだよ」
「……奏音なんか言ってた？」
「特に。私達が聞いてもにっこり可愛く笑うだけだもん。だからあんたに聞きに来たんでしょ」
「……」
「てか暖人分かってるでしょ？奏音は私とあんたとは違うんだから」
「……」
「特別なんだからね！」
最初のコメントを投稿しよう！