164人が本棚に入れています
本棚に追加
まとわりつく砂、その背中
「あ、暖人寝てる」
「埋めてやろ」
砂浜の上ですやすやと、惜しみなくその端正な顔立ちをさらけ出して彼は寝ていた。
そうなれば格好の餌食と言えよう、誰かが1人声を上げれば、俺も、私も、と皆が彼を囲む。
あっという間に見えなくなった彼の姿が次に私の視界に入る時、きっとあるのはその美しい顔だけなんだろうな。想像するだけで笑えてくる。
「奏音も共犯者になろうよー」
「私はいいや。いい人ぶって暖人にアピールする」
「え、奏音、暖人のこと好きなのー?」
「うん、好きだよ」
私の一言で、友人達は一斉に振り向いた。完全に冗談だと思って、私にその問いを投げかけた友人も驚いて目を大きくしている。そしてどういうことだと私に近づいてきた。その時にチラッと見えた暖人は既に灰色の塊になっていて、それでも爆睡し続けてる彼に感心する。
「えなに、いつから、いつからなの」
「え、最初からだよ?一目惚れ」
「や、それは分かるけどさ、確かに暖人かっこいいから一目惚れするのは分かるけどさー、
……クズじゃん」
ばっさりとそう言葉にした友人に、周りの友人達もうんうんと頷く。
「そうそう、優しく言ってヤリチンだよね」
「生々しくて今まで避けてたけど、ここにも何人か姉妹がいるよね」
「うわ、やめよこの話。とにかくおすすめはしない。けど確かにセックスは上手いよこいつ」
好き放題言って彼女達はもう興味をなくしたのか、海の方へ走ってしまった。その後ろ姿が眩しくて思わず目を細めてしまう。うまく言葉にできないけど、私は彼女達が羨ましいのだ
最初のコメントを投稿しよう!