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「あんたの顔、随分とテーブルから距離があんな。テーブル低いんじゃねぇか?」
「皆さんに合わせればこんなもんですよ。まぁ座ってください」
半分目が据わった酔っ払い男は西田と言った。
「失礼ですが、おいくつですか」
「歳か? 俺ァ56だ。ずっと独身でよ、定年までまだ10年以上もあんだけどよ、会社では上から怒られてばっ……かでさ、若い奴には舐められるし、何してもクソ面白くもねぇ。この先俺ァ何のために飯食って、何のために働いて、ぐほっ。なぁ、あんた占い師なんだろ。わかるかよ、俺の気持ち」
占い師はニヤリと口角をあげると、鼻の下のヒゲが矢印のように右上がりになった。
「わかりますよ。あなたのことなら」
「ホントに? 俺はね、ずっと1人だったの。誰ひとり、俺の心配もしなけりゃ、家に帰っても待ってる人もいない。そんで気がついたらこの歳よ。このまんまあと10年なんてやってられない、もう終わりだよ」
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