僕が君を好きになった日

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就職して4年くらいで、違う部署に移動になった。 ここでも平凡に安全に生活できると思った。 その部署の一人の同期の女性に、お金を貸してほしいと迫られた。 理由は、母が難病にかかり莫大な治療費が必要だったらしい。 金銭的に余裕があった僕は少しだけだが、貸すことにした。 その後も何度も迫られ、額はだんだん大きくなった。 そんなある日、僕は重要な商談を無駄にしてしまい、賠償金を求められた。 一気に余裕がなくなり、貸した金も帰ってこなかった。 絶望した僕は、その会社の屋上から、飛び降りようとした。 跳ね上がる心臓を抑え、震える全身を抑える。 そんな僕の手に、温もりを感じた。 振り返ると、彼がいた。 彼は僕以上に震えていた。 何を考えているか分からない目で僕を見ていた。 彼は、僕に幸せが来ると言った。 今までで何度も言われたはずの褒め言葉が、今までで1番響いた時だった。 帰り道、僕は彼に今までの事をうちあけた。 彼は僕の話を親身に聞いてくれた。 今までの誰よりも。
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