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2.
「ねぇ、覚えてる?」
部屋のカーテンを開けようとしていたその人を見て、私は馬鹿みたいにこの部屋には窓があったんだと改めて気づく。
彼はこちらを振り返り、
「何を?」と聞き返す。
「私の事、覚えてる?」
「ん?」わずかに首を傾げられた。
「あ、間違えた。私の事を知ってる?」
「知ってるよ」
「そうなんだ……」
「ねぇ、どこか痛いとこはある?」
「え、痛い所? 特にないけど、あなた医者なの? 白衣着てないけど……」
「違うよ」
「そうなんだ……」まぁ、違うかなぁとは思っていたけれど。
「で、痛い所はない?」
「あ、ない」
「ならよかった。で、何を聞きたかったの?」
「あ、そうそう、私の事。私の事知ってるって言ったけれど、何を知っているの?」
「何を――か。たいていの事は知ってるよ。君の好きな食べ物とか、君の好きな色、動物、好きな曲、後は何が知りたい?」
「そうなんだ……。なら、私と親しい友達だったってことね」
「それは違うな」
「え、違うの?」
「あぁ、君と友達だったことはない」
「友達じゃないの?」
「あぁ、違うよ。仲間だったことはあっても、友達ではない。ただの一度もね」
「なら、あなたは私のなんなの?」
「さぁ、なんだろう。僕は死ぬまで君の味方だよ」
「味方……」
「さぁ、もうそろそろ横になった方がいい」
そう言って、その人は優しく微笑んだ。
頭がボンヤリする、この人の名前は何だっけ……?
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