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「ねぇ、覚えてる?」 部屋のカーテンを開けようとしていたその人を見て、私は馬鹿みたいにこの部屋には窓があったんだと改めて気づく。 彼はこちらを振り返り、 「何を?」と聞き返す。 「私の事、覚えてる?」 「ん?」わずかに首を傾げられた。 「あ、間違えた。私の事を知ってる?」 「知ってるよ」 「そうなんだ……」 「ねぇ、どこか痛いとこはある?」 「え、痛い所? 特にないけど、あなた医者なの? 白衣着てないけど……」 「違うよ」 「そうなんだ……」まぁ、違うかなぁとは思っていたけれど。 「で、痛い所はない?」 「あ、ない」 「ならよかった。で、何を聞きたかったの?」 「あ、そうそう、私の事。私の事知ってるって言ったけれど、何を知っているの?」 「何を――か。たいていの事は知ってるよ。君の好きな食べ物とか、君の好きな色、動物、好きな曲、後は何が知りたい?」 「そうなんだ……。なら、私と親しい友達だったってことね」 「それは違うな」 「え、違うの?」 「あぁ、君と友達だったことはない」 「友達じゃないの?」 「あぁ、違うよ。仲間だったことはあっても、友達ではない。ただの一度もね」 「なら、あなたは私のなんなの?」 「さぁ、なんだろう。僕は死ぬまで君の味方だよ」 「味方……」 「さぁ、もうそろそろ横になった方がいい」 そう言って、その人は優しく微笑んだ。 頭がボンヤリする、この人の名前は何だっけ……?
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