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「ねぇ、覚えてる?」 「何を?」 「今日が何日か覚えてる?」 「あぁ、知ってるよ。6月5日だよ」 「……そうなんだ」 「どうかした?」 「いや……何日だっけと思って。この部屋にはカレンダーがないみたいだし」 「そうだね……」 「そういえば、時計もないのね」 「そうだね……」 「困らない?」 「どうして?」 「だって、時間がわからないと普通は困るでしょ?」 「君は困ってるの?」 「……別に困ってない」 ハハッと笑われる。 こんな声してるんだ……。 「僕も困ってないよ。時計があると終わりがあるみたいで、なんか嫌でしょ」 「そうなの?」 「そうだよ。僕はここにずっといたいから、時計なんていらないのさ」 「変な人」 「よく言われるよ」 「誰に?」 「……」黙り込んでしまったその人。少しだけ寂しそうに眉尻を下げた。 「誰だったかな……」 「覚えてないの?」 「そうみたい。僕にも覚えてないことがあるらしい。君と一緒だ」 「私はちゃんと覚えてるわ。私は――」 あれ? 私は――? 私は誰? 「君は君だよ。それ以外の何者でもない。さぁ、目を閉じて……、少し疲れてるみたいだから、おやすみ……」
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