記憶喪失

2/15
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「ねぇ、覚えてる?」 スマホの写真を僕に見せながら質問したのは、僕の恋人と名乗る『有彩(ありさ)』だ。 その写真には、美しい海の浜辺で有彩と僕が仲良さそうに笑顔で腕を組んで写っている。 「この写真はね、巧生と私が伊豆の海に行った時に撮ったんだよ!」 有彩は笑顔で嬉しそうに僕に写真のことを教えてくれた。 今日は大学の講義が終わってから有彩と渋谷で待ち合わせをして、一緒に夕食をとるためにパスタのお店に入っていた。 パスタを食べ終えて有彩と僕は食後のカフェラテを飲んでいて、この時有彩はスマホの写真を僕に見せてくれた。 僕の名前は『天羽 巧生(あもう たくみ)』、東京都内の4年制大学理工学部に通う21歳で大学3年生の男子大学生だ。 僕の実家は静岡で、大学入学と同時に東京都内のアパートに引っ越しをして1人暮らしをしている。 有彩は僕と同じ年で、東京都内の4年制女子大文学部の3年生で、岩手から上京して東京都内のアパートで1人暮らしをしている。 僕が有彩のことを恋人と名乗ると言ったのは、有彩は僕の恋人なのかどうか自分自身ではわからないからだ。 なぜわからないのかと言うと、僕は大学に入学してからの約2年間の記憶がなくなってしまったからだ。 いわゆる記憶喪失だと思うけれど、病院に行って脳の検査などをしたけれど原因はわかっていない。 僕は大学に入学したばかりの頃の記憶は残っているけれど最近の記憶がないため、今は大学で同じ研究室に所属する『侑志(ゆうし)』にサポートしてもらいながら大学に通っている。 僕が記憶を失ったのは3ヶ月程前の3月30日で、大学は春休み期間中だった。 この春休み期間中に僕の身に何があったのか、僕は思い出そうとしているけれどなかなか思い出せない。 断片的に覚えていることは、3月30日僕が眠りから覚めると僕は自分の部屋にいて、そこに有彩が一緒にいたことだ。 目を覚ましたその時、僕がそこにいた有彩に、 「貴女は誰?」 と質問すると有彩は、 「私は巧生の恋人の有彩だよ!」 と教えてくれた。 その時の僕は、自分の身に何が起こっているのかまったくわからず傍にいた有彩が、 「大丈夫、心配しないで!  私が傍にいるから安心して…」 と優しく僕に言葉をかけてくれた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!