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「……もう腹を決めているのですね」
「はい」
タカイヌが話の内容にそぐわないニコニコとした顔で、付け足した。
「だから、僕に向かってくるシスイの脅威からは、あなたが守ってください。あと、先王のようにもし僕が困った王に成り下がったときは、あなたが僕を殺してください──あなたのお父上がヤワジ伯父上を殺めたように」
ライカはその瞬間、完膚なきまでに降伏させられた気がした。王の考えは、国と民を想う至極真っ当なもの。どうして10年前のことをさっぱり水に流してこの空渡城に戻れようかと憎々しげに思っていたのだが、そんなことはもうすっかり忘れていた。
(──くそ、反論の余地がない)
気付いたときには、ライカの口から自然と言葉が出ていた。
「──御意」
「え……兄上、今、『御意』って言いました!?」
タカイヌは驚きのあまり、バッと立ち上がった。
「つまり、カンドル隊が僕の直属の部隊になる件を引き受けてくれるということですか!? いや~~本当にうれしいなあ! 兄上からの返事を待ってた間、ずっと駄目だろうなーと思ってたんです。半分諦めていた分、喜びもひとしおですよ!」
タカイヌがあふれんばかりの喜びを顔で表現する一方、ライカはむすっとした顔できっぱりと言った。
「まだ引き受けるとは言っていません」
「ええ~~、いけずなんだから」
ぶつぶつ言うタカイヌを無視して、ライカは続けた。
「私は隊員たちの命を預かる身ですから、10年前と同じ轍を踏むわけにはいきません。まずは、お互いに試してみる……のはいかがですか」
「試す……とは?」
「恐れ多いことですが、景王がカンドル隊が仕えるに値する人物なのか、あなたを試させてください。反対に王様も、カンドル隊がまことにそばに置くに価値ある兵なのか、私たちをお試しください」
「……なるほど。それは何やら面白そうですね。で、何を以て試すのですか?」
「それは試す側が決めることとしましょう。早速ですが、王様を試させてもらいます」
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