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作戦会議
「次は後ろだ」
「えっ……後ろも?」
「力みすぎだ、もっと力を抜け」
「い、痛くしないでね……?」
「心配するな。俺が信じられないか?」
「別に信じてないわけじゃないんだけど……」
「……いいぞ。次は前を向け」
「エッ、もう終わったの?」
奈美がくるりと振り返った瞬間、目の前にいたライカが奈美の首に剣を当てた。もちろん首の皮膚に少しも触れることなく、寸止めだが。
「……なるほどな。もう楽にしていいぞ」
「ふう……」
ライカが剣を鞘に収めるのを見て、奈美もホッと息をついた。
ライカが自分の躰をもらうとか言い出したときは、いきなり何を言い出すのかとギョッとしたが、その後のライカの説明で彼が何をしたいのかが分かった。
ライカは常々、例の紅い紐──シスイによって呪いをかけられた、ライカと奈美を繋ぐテムルという『命の鎖』の仕組みを明らかにしたいと思っていた。そのためには奈美の協力が必要不可欠で、つまり、奈美の躰を使って実験したかったのだ。
ライカは奈美にこう言った──今から幾つかの状況に分けて、おまえに剣を振り下ろす。それで鎖が出現するかどうか調べたい、と。
奈美としても、自分にとりついているテムルとやらがどういうものかを知りたかったので、了承した。剣を振り下ろされるのは恐かったが、ライカは絶対に自分を斬らないという確信があった。なぜなら、奈美を傷つければ、ライカ自身にも「良くないこと」が起こりうるからだ。
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