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「やっぱり振られたのってお兄ちゃんか」
「うふふ。楽なところに連れてってあげる。一緒に行きましょう」
「ど、何処へ?」
「ふふふ、ふふ」
もしかして僕も何処か知らない場所へ連れて行かれるのかもしれない。神隠しにあうのか。お兄ちゃんが言っていた「あの子がいなくなったらしい」という話が脳裏に蘇った。いなくなるって例え天国でも嫌だ。まだ僕は高校二年生だ、あの世には行きたくない。死にたくない。僕は頭を左右に振った。
「わたしと行ってくれないの?この世にいたって成功するとは限らないんだよ」
「今までの子は行くって言ったのか?」
死体から目を逸らして必死に声を絞り出す。死体は目をぎょろぎょろさせて笑った。
「アハハ、今までの子はみんな失神したもの」
僕は目を瞑った。
「行きたくないよ」
「え、わたしと行ってくれないの?」
「ああ、僕はまだ生きてやりたいことがあるんだ」
死体はこっちを見たまま目をじっと見る
「わたしだっていっぱいあった」
僕は何と言っていいのか分からない。ひたすら頭を左右に振り続けていた。何分そうしていただろう。意識が徐々に薄らいできた。目の前が靄がかかったようになり死体の形をした幽霊だけがはっきり見えていた。そこへトイレの外から話し声が聞こえてきた。この状態に気づいてくれるか?僕は助かるのか?
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