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「こんなところの掃除って嫌だよな。それに誰も使ってないんだから汚れてないんじゃないか?」
「そうだな。お前の言う通りだ。幽霊が出るトイレなんて誰も使わない」
待って、帰らないでくれ。僕はまだやりたいことがいっぱいあるんだ。女の子とも付き合ってみたいし。有名な大学にもいきたい。設計士になりたいという夢もある。大好きな両親に親孝行だってしなければいけないし、大人になったら結婚して子供だって欲しい。色々なことが頭に浮かぶ。まだ死ぬわけにはいかない。そう考えていたら急に悲しくなった。小学生のときの出来事を思い出した。
「君だってやりたいことあったんだろう。なんとなく分かるよ」
「え、わたし?」
「うん、死にたくなかったんだろう」
「……」
「僕を連れていけば満足なの?路で転んでたあの日を覚えてるよ。怪我なんかより死ぬの苦しかったんだね」
「瑛太くん……」
「お兄ちゃんは紗理奈さんのこと嫌いで振ったんじゃないと思うよ。大学にあがるまで勉強一筋って言ってたから。なんだったら今電話かけてあげようか?」
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