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僕は女の子の自転車を道路の端に停めると走って家に帰った。スニーカーを脱いで玄関をあがる。リビングに行くとお母さんが怪訝そうな目で見たのを覚えている。僕は棚の薬箱から消毒液とガーゼ、包帯を取った。以前、鬼ごっこで転んだ時にこれを使ったからだ。
急いで女の子のところへ戻る。女の子は怪我した足を曲げて道路の隅にある大きな石の上に座っていた。
「消毒液を持って来たよ。滲みるかも知れないけどいい?」
「うん」
僕は泡の消毒液を血が出ていた膝にかけた。そしてガーゼをあてて女の子に包帯を渡した。女の子は器用に包帯を巻いた。
「本当にありがとう。あの、君の名前は何ていうの?」
「僕は瑛太だよ」
「そう、わたしは紗理奈。高校二年生なの。学校には自転車と電車で行ってるんだけど、転んじゃったの。でも治療してもらったし、もう大丈夫」
僕はにっこり笑顔になった。女の子も頬を緩める。そこへお母さんがやって来た。
「瑛太。なにしてるの。もう遅刻じゃない」
「あ、ごめんなさい、お母さん」
「まったく、今日は罰としておやつは無しね」
「えー、残念だなー」
「そこの女の子も高校生でしょ。早く学校に行きなさいね」
お母さんは腰に手を当てて怒る。僕は急いで学校へ駆けて行った。
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