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四階にはトイレがある。そのトイレでは何年も前に女の子が怨霊に憑りつかれて神隠しにあったという噂がある。僕は悪寒がしてまた手紙を丸めた。
つんつん、つんつん、またもや後ろの女の子は背中を叩く。僕は同じように手紙を受け取ると読まずにそのまま机の中に入れた。
四階のトイレか。僕は数年前の梅雨の初めを思い出す。お兄ちゃんとお兄ちゃんの友達、僕というメンバーで家で雑談をしていたときだ。確か僕は中学生だった。
「あの子がいなくなったらしい」
お兄ちゃんが友達に向かって言った。友達は腕を組んだ。お兄ちゃんは返事を待たずに続ける。
「憑りつかれたんだってよ。それで精神に異常をきたしていつの間にかいなくなったんだってさ。怖いよな」
僕が今通っている高校はお兄ちゃんと同じだ。歳が四つ離れているのでお兄ちゃんは大学生になった。
そのときはいなくなった子について詳しい話をしなかったが、以前お兄ちゃんはこんなことを言っていた。四階のトイレには男子に振られて首を吊った女の子が出ると。トイレの個室。そこのドアの上にロープを掛けたらしい。普通の首吊り死体は綺麗じゃない。だが女の子が見つかったときは首つり死体の割にきれいだったんだそうだ。ただその子は怨霊となって今でもこの世にいるらしい。怨霊は梅雨から夏に掛けて、たまに四階のトイレに出るとお兄ちゃんは言う。女子トイレで死んだのに男子トイレにも出ることがあるらしい。怨霊に会った子は神隠しに逢ったようにいなくなるという話だ。
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