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つん、つん、つん、つん
誰かが背中を突く感じがする。気のせいか?誰もいなかったはず。振り返って確かめたいが怖くてそれが出来ない。僕はまたノブを動かす。駄目だ。
つん、つん、つん、つん
異臭が漂って来た。僕は鼻に親指の甲をつける。
つん、つん、つん、つん
ああ、止めろ、止めてくれ、僕はまた大声を出した。声が震えていた。
「だ、誰なんだよ、僕をここから出してくれ」
一瞬、静寂があった。そのあと女の子の笑い声がした。
「ふふふ、ふふ。ふふふ、ふふ。私は紗理奈。ここで首を吊って死んだの。好きな人に振られてね。怜太くんっていうの。年下を好きになったらダメね」
ちくしょう、首を吊って死んだ子の怨霊か。それとも悪い悪戯?だが待てよ。この紗理奈って名前は聞き覚えがあるし、怜太とはお兄ちゃんの名前だ。だが怖くて歯が噛み合わないので聞くことも出来ない。
「手紙を読んでくれたんでしょ。あれ、わたしが一番後ろの席の男子に催眠術をかけて書かせたの。瑛太くんのこと誘おうって思ってたんだ。ねえ、わたしのこと覚えてる?」
「え、名前は聞いたことあるけど、誰だっけ?」
「忘れちゃったんだつまんない」
僕は怖くて後ろが向けない。でもこの幽霊は僕のことを知ってる。もしかしたら会いたいだけのために呼び出したのか。そうだったらいいが。神隠しにはあいたくない。
「あ、そうだ、ねえねえ、ロープを持って来た?」
「な、なんだよ、ロープって」
「三枚目の手紙に書いてあったでしょ。体育館からロープを持ってくるようにって」
三枚目の手紙は読んでない。僕はそれを机の中に放り込んだんだ。そんなの読んでもロープなんて不吉で持って来ないが。そもそもトイレに来なかったと思う。
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