一服盛られて素直になりました

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一服盛られて素直になりました

 いつも帰ってくる時間になっても先生が帰って来なくて、心配になった俺は部屋を出た。  赤くなった空が暗闇に変化し始めていて、妙な胸騒ぎがした。  アリアス先生は仕事人間だ。  いつも気だるそうで適当に見えるが、根は真面目で与えられた仕事は寝る間を惜しんでもしっかりやろうとする。  先生について聞いていた噂は酷いものだった。少年のように可愛らしい男が好きで、彼の好みの生徒は保健室に捕らわれて、骨までシャブられるなんてホラーみたいな話も聞いた。  もちろんあの容姿だ。パッと見たら忘れられないくらいの美貌の人。すらりと伸びた身長に適度についた筋肉、輝く金の髪に色白で蠱惑的な紫の瞳、吸い付きたくなるような赤い唇。  初めて見た時は、少し冷たそうな美人に見えたが、実際の先生は全然違う人だった。  噂に関して言えば、俺の方が負けないかもしれない。  半分の出来損ないから始まって、強い魔法が使えるようになると、今度は化け物だと言われるようになった。  あるパーティーで母親のことをバカにされて、頭に血が上ってしまった。  俺に暴言を吐いてきたヤツらを一瞬で全員半殺しにした。  それ以来、直接悪口を言われることはなくなったが、近づくだけで呪われるや、公爵家に従わない者達を消しているなどと、勝手な噂ばかり増えていった。  母さんは自分を捨てた男のことを何一つ悪く言わなかった。死の淵にあっても、俺の幸せばかり祈っていた。  母さんを亡くして一人ぼっちになって、公爵家に引き取られても、俺はいつも一人だった。  それでいいと思っていた。  どうせ一人で生きていくのだから、誰も必要がないと、ずっとそう思ってきた。  だが、あの人は…、アリアス先生に初めて会った時、まるで天使のような微笑みを向けてくれた。  厳重に鍵を掛けて硬く閉ざしていたドアを、いとも簡単に開けてきた。  その笑顔が記憶にある人と似ていて、胸がキュッと痛んだ。  不安になった俺は、俺についての噂話を自ら披露した。  恐怖や軽蔑の眼差しを期待したのに、先生は必死に話す俺を見てゲラゲラと笑ったのだ。  信じられなかった。みんな恐れて逃げて行ったのに、先生はただ笑っていた。  ひとしきり笑った後、お前はそんなヤツじゃないだろうと言ってきた。  知り合ったばかりの先生に俺の何が分かるのかと反抗する気持ちが出てきたが、先生はなぜか俺に絶対的な信頼があるような目で、違うのか?と言って俺を見てきた。  純粋な色をした瞳は、やはり母によく似ていた。  その笑顔に俺の反抗心は吹き飛ばされてしまった。  違わないと俺が小さい声で返すと、満足そうに、だろと言って笑っていた。  冷たい人に見えた先生は、優しくて温かい人だった。  その時俺は、誰かの優しさに触れることが怖かったのだと気が付いた。  あの時はどんどん気持ちが膨れ上がってしまい、先生を無理矢理抱いてしまった。  その事は後悔していないが、それ以来ずっと避けられてしまい、どうにかしなければと焦っていた。  なぜなら、俺と同じくアリアス先生に手を出したジェラルド先生に、俺の幼なじみで唯一まともに喋れるライジン、学年一の頭脳だと一目置かれているルナソル、次々とアリアス先生に興味を持って近づく男が出てきてしまった。  そして今回の結婚騒動だ。  初めは厄介な事になったと思ったが、アリアス先生と二人きりで過ごせるという事は、自分を知ってもらうチャンスだ。  本当は直ぐにでも自分の欲望を叩きつけたくてたまらなかったが、必死に我慢した。おかげで自分の気持ちを再認識して、先生のことがもっと好きになった。  できれば先生から触れてもらいたかったが、それが叶うことなく約束の二週間が経とうとしていた。  今夜はダメ元で自分から誘ってみようと思っていた。それがダメでも諦めるような考えはなかったが、受け入れてもらいたかった。  しかし、いくら待っても先生は帰って来なかったので、学園に戻った俺は保健室へ向かった。  ノックしようと手を上げた瞬間、部屋の中から、やめろ、触るなという苦しそうな掠れた声がした。  それが誰の声だか瞬時に頭は理解したが、それよりも先に体が動き出した。  保健室のドアを蹴り破って中に入った俺は、目を入ってきた光景に言葉を失って身体中の血が沸騰しそうなくらい怒りに支配された。  □□  手からこぼれ落ちたカップが床の上でガシャンと音を立てて割れた。  中に入っていた液体がだらしなく広がっていくのを見て、これはおかしいとやっと気がついた。 「……なんだ。力が……」 「心配しないで、先生。ちょっとヤラシくなるお薬だから。どうやって飲ませようかと思ったけど、お茶を用意してくれたから助かった」  目の前に座っている生徒がぐにゃりと曲がったように見えて、手で目元を押さえた。  どうやら、窓を閉めるために離れた隙に一服盛られたらしい。 「ど…どうして、薬なんか…」 「……だって、先生、僕のこと覚えてなかったじゃないか!!以前パーティーで会った時、声かけてくれて…学園に入ったら可愛がってあげるって言ってくれたのに!!」  またアリアスの仕業かと怒りを通り越して悲しくなった。俺が転生する前にインラン先生だったアリアスは至る所に火種を撒いていた。確か前にも噂を聞いたとかで押し倒されて、デュークに助けてもらった。そして、今回はアリアスが頂こうと唾をつけていた生徒に、俺が薬を盛られるという勘弁してくれよという事態だ。 「どうする…気だ?これは催淫剤か?俺のを立たせて……するつもりなのか?」  ついにソッチも経験することになるのかと、冷や汗が出てきた。ヤられるわけではないが、それはそれで嫌な気持ちが込み上げてきた。 「ふふふっ…、イアンに聞いたよ。先生、まともに立たないんでしょう?」 「あー…イアン…ね…」  イアンは前回俺を襲ってきたが、俺のアソコが反応しないのでインポだと言ってきた野郎だ。  それで薬を持ち出してきたのかと、悲しい納得をしてしまった。  即効性の薬なのか、すぐに下半身に熱が集まってきてアソコが張り詰めていくのを感じた。  はぁはぁと熱を逃すように息を吐いていたら、生徒が近寄ってきた。  力をなくして床に崩れ落ちた俺の上に、乗ってきたそいつが俺の顔に触れた時、ゾワゾワと寒気が走って吐き気がした。 「やめ…ろ!嫌だ!恐い……」 「あれ…?なんだろう、先生なんだか可愛いね。あっ、この薬ハモンの葉が入っていて自白剤の効果もあるんだ。まっ軽いものだから、お遊び程度?」  俺は弱気な言葉が勝手に口から出てきてパニックになった。お遊びでこんな事をされるなんて慰めにもならなくて、せめて噛みついてやろうと手足をバタつかせてもがいた。  しかし、着ていたシャツの前を掴まれてバリバリと引きちぎられながら開けられてしまった。  お気に入りの小花柄のシャツがグシャグシャになった様を見て、俺の心はポキリと折れた。 「やめろ……、触るな……」  くやしくて涙声になりながら、やっと言葉を絞り出した時、激しい轟音と共に保健室のドアが弾け飛んだ。  俺も俺を襲っていた生徒も、一瞬何が起きたのか分からずに、真っ黒になっている入り口を見て固まった。焼け焦げた匂いと白い煙、その中にぼんやりと人影が見えた。  目を凝らすと、煙の中から出てきたのは、全身に赤い炎を纏ったデュークだった。  赤い髪は火の中で立ち上り、デュークの目は真っ赤になりギラギラと光っていた。  まるで悪魔のようだと思ったが、まさにデュークの頭からは二本のぐにゃりと曲がった角が生えていて、もはや魔王にしか見えない恐ろしすぎる姿に、俺は叫びそうになった。 「…クズが…先生から離れろ!塵にされたいのか!!」  いつもの落ち着いた声が信じられないくらい低くて、俺は自分が怒られているみたいで震え上がった。  それは襲ってきた生徒も同じだったようで、見ると目が白目になって恐怖で完全に気絶していた。 「警告は終わった。地獄の業火で一瞬で灰にしてやる。灰になっても痛みは続くぞ…、アリアスに手を出した罰は未来永劫お前を苦しめ続け…」  こちらも完全に目がイってしまい、厨二病みたいな台詞を吐き始めたので、俺は本格的にこれはヤバいと思い始めた。  デュークの手には真っ黒な炎みたいなのが集まってきて、圧倒的な力の波動で周囲の物を吹き飛ばしていった。 「おい…デューク!しっかりしろ!デューク!!まともに戻ってくれ!」  このまま魔界に住むドラゴンにでも変身しそうな勢いのデュークに近づいて行った。怖すぎてちょっとチビってしまったが、そんな事は言っていられない。  このままだと、学校中破壊しそうな勢いを感じたのだ。 「デューク!あの生徒はとっくに気絶して動けなくなってるから!ほら!先生近づくから、おーい!分かるか!?」  ブチ切れてる猛獣を何とか手懐けようとする飼育員の気持ちで、フレンドリーな顔を作って両手を広げて近づくと、イっちゃってたデュークの目が元の緑色に戻って、周りを取り囲んでいた炎が消えていった。 「せ…せ…んせ…」 「そうだ…、先生だ。ったく、保健室めちゃくちゃにしやがって…。助けてくれたのは嬉しいけど、度を超えてるぞ」  俺は顔が恐怖で歪みそうになるのを必死で耐えながら、優しい先生の顔を死守した。  やっと炎と角が消えて元に戻ったデュークは泣きながら俺を抱きしめてきた。 「先生!お…俺!先生が襲われているところ見たら…服だって破れているし…もう頭にきちゃって……怒りが抑えられなくて……」  俺はデュークに抱きしめられながら悟っていた。  このお方を怒らせてはいけないと。  さすが主人公様、一般人とは桁違いの力をお持ちのようです。誰だよコイツを総受けにしようとしたヤツらは……。 「あ…んんっ」 「先生…?」  命の危険を感じる出来事を目の前にしてすっかり忘れていたが、デュークに触れられた事で、体はそうだったと勝手に思い出してくれたらしい。  俺の下半身の熱は急速沸騰で復活してきた。 「や…悪いな。あの生徒に薬を盛られて……」 「まさか!毒か!?あの野郎!」  デュークの目の色が変わりまた角が生えて魔王降臨のオープニングが始まりそうだったので、俺は慌ててデュークの首にしがみついた。 「あいつは…いい、後で校長に処分…してもらうから…。それより、その…薬…、その…催淫剤なんだ…。はやく…デュークの部屋に…」  耳元で吐息をかけながら、必死に訴えると、ピクリと体を揺らしたデュークは、すぐに俺を持ち上げて走り出した。  いくらなんでも、成人男性を持ち上げて走るって、どんだけの腕力と脚力なのかと感心しながらデュークの素早い対応に感謝してしっかりしがみついた。 「先生、つらい?俺がすぐ楽にしてあげるから!」 「んあっ……!!」  最短記録で部屋に戻ったデュークは、俺をベッドへ載せた。すでに薬が全身に回ったのか、僅かにシーツに擦れただけて、俺は喘ぐ声を上げてしまった。  デュークにズボンを脱がされると、すでに下着はぐしょぐしょに濡れていて、俺の出したものが糸を引いていた。  ゴクリと唾を飲み込む音がしたと思ったら、デュークは躊躇いなく俺のちんこにかぶりついてきた。 「んっあああああ!!デューク!!」  生温かく柔らかいものに包まれる感覚に、熟れきっていた俺の体は歓喜に沸いて、俺はビクビクと揺れてデュークの口内に発射してしまった。  早すぎる射精にこれは薬のせいだと言い聞かせながら、熱が冷めるのを待ったが、困った事にどんどん熱くなるばかりで全然熱が収まらない。 「先生、どれくらい飲まされたのか分からないけど、催淫剤なら、一回イったくらいじゃすまないよ。俺の口の中にたくさん出していいから」  デュークがまた俺のを口に咥えて、舌で刺激しながら上下に動かし始めた。  今までなら、絶対やめろと言って逃げていたが、爆発しそうな熱を抱えて、デュークの口淫が気持ちよくてたまらなかった。気がついた頃にはデュークの頭を掴んで、もっともっとと言って勝手に動かしているほどだった。 「はぁ…足りない…足りないよぉ…。デューク…、俺に入れてぇ…」  自分で口にしながら、頭の端で冷静な俺は何を口走っているのかと震えた。 「先生…、そんな事を言ってくれるなんて…。薬のせいか…、確か最近出回っているやつは自白剤の効果もあるとか……」  何やらブツブツと呟いていたデュークは下着をくつろげて、自分のモノを取り出してきた。相変わらずの巨根ぶりに、意識の俺は引いていたが、表に出ている俺は待っていましたと言わんばかりの喜びの声を出した。 「あん…それ、それ欲しいのぉ…。デュークの大きいの…俺の後ろの孔に入れてよぉ…」 「やばっ……、薬が入った先生ヤバすぎる…」 「はやく…、疼いてたまらないんだよ…。熱いのブチ込んで、俺をヒィヒィ言わせてイかせて……」  ブチりと何かがキレる音がして、どうやら理性の紐が切れたらしいデュークが俺に覆い被さり、後ろの孔に自身をあてがうと一気に貫いてきた。  もちろん、俺の後ろは準備万端でグジュグジュになっていたので、デュークのモノをすっぽり奥まで飲み込んだ。  デュークはすぐに律動を開始して、俺の中をグスグスにして満たしてくれた。 「あああっ!!あっんんあんあっあっ…い…いい!さいこ……きもち…い…あっぁぁんん」 「……先生、ナカすごいうねってる。ほら、ここ突くと、ぎゅって締まるよ。先生、俺のちんこ好きなの?」 「んっ…あっあっ…すき…、デュークの大きくて…大好きなの……」  頭の端の俺が、なんて事をと言いながら頭を抱えていた。普段なら絶対こんな台詞を言わないのにとますます現実逃避したくなった。 「もっ…とぉ…突いて…強くして…あっ、そう…そうだ…あぁきもち…いい、あっ…また…イク…ああああっっ」  ガンガンとベッドが壊れそうなくらい腰を打ち付けられて、目がチカチカするほどの快感に襲われながらら俺は何度もイって自分の腹にもデュークの腹にも飛ばしまくった。  そのうち耐えきれなくなったのか、デュークも俺の中でイって、どくどくとあの長い射精が始まった。  デュークの精を受け止めながら、また奥に感じる快感に、俺もイってしまい、何度も意識を失いかけた。 「……先生好きだよ。先生は俺のこと好き?」  デュークが切ない目で俺を見つめてきた。ずるいやつだ。薬の効果で胸の内を晒してしまうこんな時にそんな事を聞いてくるなんて。 「男なんて嫌い…大嫌い。……でも、デュークは……嫌いじゃない……」  ポロリと出たのは本音で合っているのか、自問自答しながらも、どうやら俺はデュークを気に入っているらしいと気がついた。認めたくなくて、表には出さなかったけど、オープンな今の状態では止める術がなかった。  確かに一緒に暮らした日々はなかなか悪くはなかった。 「嬉しい…。俺、それで十分だ。アリアス…好きだ…大好きだ」  どくどくと大量の精液が奥に注ぎ込まれるのを感じながら、俺はデュークに、ぎゅうぎゅうと抱きしめられて胸の中に温かいものを感じていた。  こうして、デュークとの二週間は無事……、かどうかはあれだが、やっと終わりを迎えた。  □□□
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