ピンチに助けてくれたら…ちょっと好きになっちゃう説

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ピンチに助けてくれたら…ちょっと好きになっちゃう説

「はぁはぁはぁはぁ……、クソォ…あのバカ犬、どこに行きやがった」  本人の前でここまで言えないが、こんなに走らされたのだから、毒を吐くくらいいいじゃないかと思いながら路地裏の壁にもたれた。  小一時間走り回って探したが、ライジンの姿はどこにもなかった。  まさかの置いてきぼりで先に帰られてしまったかもしれない。  その可能性が濃厚になって俺はペタリと地面に座り込んだ。 「家に帰っていたら全裸にしてお座りで決定だな」  ため息をつきながら空を見上げた。もうすっかり夜空だ。  この世界の夜はそこまで暗くない。星が眩しいくらい輝くので、昼間ほどではないが晴れていれば灯りも必要ないくらいだ。  息を整えながら夜空を見上げていたら、おいニイチャンと声をかけられた。 「この辺じゃ見かけない顔だな。ずいぶんとお綺麗だし、身なりも上等だ」 「貴族のお坊ちゃんがこんなところで何してんだ?」  どこからか男が次々と出てきた。数にして五人、いかにもチンピラ風で、はだけた胸元に胸毛がたっぷり見える男達だった。なんともふざけたキャラデザインだ。 「人を探していたんですけど、この辺りにはいないのでもう行きます」  立ち上がって大通りに向かおうとすると、男達は道を塞いできた。 「一緒にさがしてやろうか?」 「結構です。どいてください」 「金だけと思ったが、気の強そうな美人は好きなんだ。俺達と遊んでくれよ」  ゲラゲラと男達が笑いながらジリジリ近づてきた。  俺は手に力を入れて身構えた。  ただのモブキャラの分際で、主人公の攻略対象者であるこの俺、アリアス様を襲おうなんてバカすぎて話にならない。 「おい、こいつ…すごい…甘い匂いが……」 「なんだ…?やけに色っぽい男だな…これはやばい」  そう、登場人物で名前もキャラクター専用ページまで持っているはずの俺のスキルといえば……。  ただセクシーなだけ……。  あー最悪だ。 「へへっうまそうだ」  男の一人にガッと腕を掴まれた俺は自らの運命を呪った。殴って金貨でも口にねじ込んで黙らせてやりたいが、腕力もなければ財力もない。  全くなんて使い物にならないと嘆いた、  しかし、この男達の登場はある意味歓迎するべき事態かもしれない。  攻略対象者達はヒーローズだ。  ヒーロー(俺もだが)は主人公のピンチには必ず現れるもの。  路地裏に広がった大きな影を見て俺は安堵のため息をついた。 「俺のメスに汚い手で触るな」 「へっ…うわぁぁぉ!!ぐおおおっ」  俺の手を掴んでいた男は、首根っこを掴まれてそのまま放り投げられた。だいぶ遠くに飛んで壁に叩きつけられた音がした。  死んだかな?知らないけど。 「ばっ…バケモノ…!!」  突然現れた大男が一瞬で仲間を放り投げたので、周りの男達は驚き恐れ慄いていた。  月明かりの下、ライジンの目は赤く光り、緑の髪は白銀に変化していた。口元には大きな牙が出ていて、まさに狼男そのものだった。  ライジンからしてみれば雑魚すぎる男達だ。本物の怪物が登場してしまったので、みんな悲鳴をあげて逃げて行った。  剣を使うまでもなく素手で十分、そんな雑魚達のことなど見ることもなく、ライジンは俺のそばに近づいてきた。 「遅い!どれだけ探したと思ってんだ!!」 「アリアス、すまない。気がついたらお前がいなくなっていて、こんな時間になっていた」  こんな時間になるまで俺がいない事に気づかないとかありえないと俺はお怒りモードに入ったが、ライジンの方は怒りが鎮まったのか元の緑髪に戻っていた。 「……一人にして本当にすまない」  帰りの馬車を捕まえて乗り込んだが、ライジンは、シュンとした顔になって俺に謝ってばかりいた。 「つい目についたお店に入ってしまって…、アリアスに似合うと思ったらそこから離れられなくて……、どれにしようか迷っていたたらこんな時間に……。店屋の主人も俺があまりにも決めないから、最後は疲れて倒れてしまった」  決断力がありそうな男に見えるが意外と目移りして優柔不断なタイプなのかもしれない。ライジンは恐る恐る俺に箱を手渡してきた。 「開けてくれ…、俺からのプレゼントだ」  まさかこんな無骨の塊みたいな男が俺に何をくれるのかとビビったが、箱を開けて中身を見た俺はもっとビビって、うへぇと変な声が出てしまった。 「これを……俺に……?」  真っ赤な顔をして挙動不審に目線を外へ向けているライジンを、俺はマジマジと見てしまった。  箱の中身はネックレス?だった。  ネックレスと言っても、アニメに出てくる修行僧キャラみたいなのが首にかけている、デカイ数珠みたいなものが入っていた。 「…ゴボン!…てっ……天然の水晶で魔力が込められているらしい。迷ったけどこれがアリアスに一番似合うと思って……」  はっきり言って最悪のセンスだ。宝石屋でこれを選ぶのはライジンぐらいしかいなかっただろう。この俺のどこをどう見たらデカい数珠をぶら下げているのが似合うと思ったのか謎すぎる。 「ふふっ…これを俺に……ね」 「気に入らなかったのか……?」  デカい体を小さくしながら、ライジンが心配そうな目をして尋ねてきたので、俺はつい笑ってしまった。 「お前には敵わないなぁ。言っておくけどセンス悪いぞ」 「ううっ…!!」  ショックを受けたのか、まるで叱られて尻尾を丸めている犬のようにライジンが可愛らしく見えてしまい、俺は重症だと思った。 「こんなデカくて重いもの首につけるヤツがいるか。……でもまぁ、気持ちは嬉しいから貰ってやる。ついでに大切にするよ。せっかく俺の存在も忘れて没頭するほと半日もかけて選んでくれたんだし……」 「アリアス……」 「ん?お前その箱はなんだ!?」  ネックレスを入れていた袋に一緒に入っていたらしい小箱をライジンは自分の横に置いていた。その見覚えのあるマークに俺は目を光らせた。 「ああ、店の記念品らしい。おまけで付けてくれたペンのインクだ。俺はそこまで使わないし、よかったらアリアス、お前が……」 「ライジン!!これだよ!俺が求めていた。マーベル製のインクは!!しかも最高級純正インク!俺の給与三ヶ月分!ありがとう!」  嬉しくなった俺は狭い馬車の中でライジンに飛びついた。ライジンはセンスはないが、かなりの運を持っているらしい。そういう男は大歓迎だ。 「アリアス…だめだ。あまりくっつかないでくれ…。匂いがすごくて…自制するのがやっとなんだ……っんんんっ…!!」  今日の俺はおかしい。  暗くなるまで一人で待たされて、平気なフリをしていたが、本当は不安でたまらなかった。前世の頃、親に置いて行かれたと思って泣きながら歩いていた記憶を思い出した。  訳の分からない異世界に取り残された寂しさと不安と恐怖。  ライジンが助けに来てくれた時、遅かったなと言いながら、本当はすごくカッコよく思えてしまった。  今日は本当におかしい日だ。  なぜなら、俺からライジンにキスを仕掛けて、唇をふさいだからだ。 「んっ…ふっ…ぁ……あ……んんっ」  デカいライジンの体で馬車の中はただでさえ窮屈。なのに、俺はライジンの唇を吸いながら、股間に手を這わせた。  思った通り、ギチギチにズボンを押し上げて硬くなっているそれを布越しに擦ってやると、ライジンは熱い息を吐いた。 「アリアス…お前…するのは…いやなんだろう?そんなことされたら…俺は…もう……」 「いいよ。したい…、したくなった」  耳元でそう囁いて、俺の硬くなったモノをライジンのデカいのに擦り付けてやったら、ライジンはごくりと唾を飲み込んだ。 「何日もヤリまくるのは勘弁だけど……、今はお前としたい。……だめか?」  甘えるようにライジンの舌に自分の舌を絡ませて歯を立てた。  するとライジンは獣のように雄叫びのようなものを上げた後、俺の口に噛み付くようなキスをしてきた。  その時舌に鋭い感触がして気がついた。ライジンは牙を出していた。狼族であった頃の名残で本能的に興奮していることを示す証。その鋭さが恐ろしかったが、それと同じくらいの快感が俺の中に火を燃やした。  既に俺の後ろの穴はグズグズに緩んで、涎のように愛液を垂らしていた。  自分からズボンを下げてライジンにまたがった俺は、ライジンのペニスを手に取ってそれを下から孔に当てて、体重をかけて一気に腰を下ろした。 「ふっああっ…うっ、ああ!ああああああ!!」 「アリアス…ばか…や…。勝手に……」  欲しくて欲しくてたまらなかった。  まさか、こんなことを自分でしてしまう日が来るなんて思わなかった。  自分でも信じられないが、後ろが疼いてたまらなくなっていた。  オスが欲しい…種が欲しい…。  もしかしてスペルマとして目覚めてしまったのか、俺の頭の中はそれがどんどんと占めていた。  自ら腰を振ってライジンのモノをズブズブと飲み込んで締め付けた。 「ア…アリ…、締めすぎだ…だめだ……もたない……」 「い……いいよっ、ライジン…出して…欲しい…たくさん…っあ…あああっんんんっ!!」  俺は腰を振りながら達してしまった。元気よく飛んだ精が自分の顔やライジンの顔にも飛んでいた。  イった快感でナカをぎゅうぎゅう締め付けてやったら、ライジンも詰めた声を出して俺の中で爆ぜた。 「あ…ぁ…あんんっ…熱いの…」 「アリアス…はぁ…」  だらだらと長く出している男がやけに早く俺の腰を持ち上げて自身を引き抜いた。  もしかしたら、前回腰が使い物にならなくなったのを考えてくれたのかと思ったら、さっと服を直して、続きは部屋だと耳元で囁いてきた。  どうやら馬車はもうとっくに到着していたらしい。  ライジンの上着に包まれながら、軽々と持ち上げられて馬車から降りた。  寮までの道をライジンは俺を抱えながら歩いた。どうやら俺を歩かせるつもりはないらしい。確かに服が乱れていたし、アレが付いているところを見られたらあれなので助かった。 「……大きすぎる父がいて、俺はずっと自分が何をすべきか迷い続けてきた。でもようやくわかった気がする…。俺の剣は、アリアス…お前を守るためだけに捧げたい」 「え……」  いくらなんでもそれは重すぎる。いやいや、この俺だよ……こんな俺に国家を動かすような力を捧げられても重すぎて圧死する。  どう断ろうかと思っていたが、ライジンは返事は必要ないと言ってきた。 「これは俺の意思だから。なんと言われても変えない」  ついさっきまで金を巻き上げようとしていた男に何を言っているのか正気になれと言いたかったが、頑固だししつこそうだから説得できそうもない。  俺は王でも何でもないから騎士が忠誠を誓うものとは別物だろう。本人がそれでいいと言っているのだし、俺はあまり深く考えず好きにしろと言った。  俺を抱き上げているライジンの腕に力がこもったような気がした。  それから期限までの一週間はあっという間に過ぎた。俺も仕事が忙しかったし、ライジンもテスト期間だったので、濃厚過ぎた週末の名残を残しながら別れの時は来た。  部屋を出るときに濃厚なキスをされて、俺を選んでくれと一言残して、俺の反応を見ることなくライジンはドアを閉めてしまった。  デュークの時といい、この場面は何回やっても慣れない。ひどいことをしているみたいな気分になって胸が痛んだ。  後二人。  デュークもライジンもいいヤツだったので、最後にちゃんと俺は選ぶことができるのか不安になってきた。  小さく唸りながら閉められたドアを眺めていたら、先生と声をかけられた。 「アリアス先生、迎えにきました」  他のヤツらよりも高音で耳障りの柔らかい声が聞こえて、振り返るとルナソルが立っていた。 「わざわざ、迎えに来てくれたのか?悪いな」 「いえ。先生に来て頂けるのですから当然です」  ルナソルは優しげな表情でふわりと微笑んだ。そこだけ花が咲いたみたいな明るい空気になった。  デュークもライジンも当たり前のようにタメ口で普通に話してくるが、ルナソルだけは唯一ちゃんと敬語で話してくれる。それだけでも好感だったし、彼なら任せられるという安心感がある。  話し合いで三人目に手を挙げたのはルナソルだった。俺は候補者の中でルナソルが一番安全な男だと始めから思っていた。  以前図書館で変な雰囲気になったが、俺が触れさえしなければ、そういう関係にはならないだろうとも考えていた。  色々相談したいこともあるし、この二週間は平和に過ごせるだろうと思っていた。 「先生…?大丈夫ですか?顔が赤いですけど……。唇も少し腫れてますか……?」 「ああ、これはさっき、別れ際にライジンに……いやっ……、ええと、気にするな」  玄関ドアに押し付けられて、口の中を散々蹂躙された。  おかげで後ろは濡れているしアソコは半勃ち状態で外に出されることになったのだ。  しかし、そんなことをルナソルに悟られるわけにいかない。  慌てて顔をそらして、隠すように頬に手を当てて誤魔化そうとした。 「チッ……」  微かに舌打ちのような音が聞こえて、俺はぱっと手を離した。  しかし、目の前には先ほどと同じように微笑んでいるルナソルの姿があった。 「どうされました?先生」 「あっ…いや、なんか……疲れたみたいだ」 「それはいけませんね。さあ、私の部屋は一番上の階です。他人の部屋で寝起きしていたら疲れも出ますよ。今日は一日、休んでください」  幻聴でも聞いたのかとモヤっとしていたが、ルナソルの神対応にさすが気の使える男だと俺は心が晴れて、ありがたく部屋に向かうことになった。  やっぱり、いいヤツだ。これからの二週間はのんびり過ごさせてもらおう。  俺はこれからどっぷりと深い沼に落とされることも知らずに、この時はまだ余裕でいたのだった。  □□□
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