佐伯美鈴の強さと怖さと

8/8
1231人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
内藤 彩芽は鷹崎を非難するような眼差しを向けていた。 「私と付き合っている時は冷たい男だったのに、若い子には良い顔するのね。」 美鈴をジロっとみて内藤は、美鈴にも好戦的な態度を示したが美鈴は顔色ひとつ変えずに彼の動向を見守る。 「冷たいですか・・否定はしません。でも貴女とは付き合っていた記憶はないですよ。」 シレっとする鷹崎に「こういう男よ、女なんて何とも思わないような。」そう非難してくる彼女に向かって我慢が出来なくなった美鈴が口を開こうとした時に「否定はしませんよ、彼女以外は、どうでもいいですから別に何とも思ってませんよ。」そう言って美鈴を見つめて笑う。 この男の笑顔なんて見たことが無かった。 笑う事も感情がないとしか思えない冷たい態度だったし、それがクールに見えたのと鷹崎家の後ろ盾がある彼と付き合えれば自分にも有利だと思っていた。 なのに、強引に自分から関係を迫り甘い言葉の一つも聞けずに行為の後に薬を用意しているような人でなしの男がありえないほど甘い声と顔を彼女には向けている。 確かにスタイルもよく綺麗な女性だけど法曹界で何の役にも立たないような彼女を彼が何故選んだのか・・そして弁護士を辞め事業家になった彼だけど弁護士の自分の方が今でも彼には相応しいんじゃ無いかと思うが、彼は彼女しか見ていない。 彼の心に一瞬でも自分がいたのではと思ったがそれは違うと彼が彼女に見せる顔を見て思った。 彼を諦めた事は間違いではなかったがでも、過去の自分が出会った男は、御曹司とは名ばかりだった、詐欺のような仕事を繰り返し現在服役している。 そうなったのも全て鷹崎が彼の父親を追い詰めたからだ。 「貴方のせいよ・・貴方のせいで息子の父親が服役しているの。しかも祖父までも現在服役しているのよ。」 そう叫んだ時に「言い掛かりですね、彼は仕事をしただけ。」と静かな声で美鈴が言った。 「貴女が言っている事私には、理解できませんが、ただ彼が仕事しただけです。そして無罪なら服役はないでしょう?」 「貴女に何がわかるの?」 「貴女は、義妹の話をちゃんと聞いてここにいるのですか?今おそらく病院から電話があると思います。手術の同意書が必要ですからね。」 そう彼が言い終わると同時に彼女のスマホが着信を知らせた。 「すぐに行くわ。」 と彼女は顔色を変えて鷹崎を見た。 「貴方・・どうやったの?」 「さあ~義妹に聞いてください。ああ、僕は条件をつけています。美鈴に係わらないでくださいね。」 そう彼が言うと彼女は「ありがとう」とだけ言って踵を返した。 「隼人さん?」 何が起こっているのか解らない美鈴に微笑みかけて「後で話します。」 と言って専務室へと二人で向かった。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!