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当然交際を隠そうともしない鷹崎は先に美鈴の所属部署である営業企画課のある階で彼女をエレベーターから降ろすと、自分は専務室まで直行する。
「行ってきます。」「いってらっしゃい。」と声をお互いにかける様子は最初はさすがに驚いた社員達だったが、今は日常になりつつあった。
「おはよう。井川君」
「おはようございます美鈴さん。」
井川は美鈴の後輩で良き理解者であり相談相手だ。
何か考えているのか、悩んでいるような顔をしている美鈴に気が付いた井川は何かあったのですかと彼女に声をかけた。
「うん。あのね鷹崎専務が朝お迎えに来てくれるのだけど、彼が睡眠時間を削っているように思えて心配なのよ。」
美鈴は加奈子から聞いた鷹崎専務の激務の話を井川に話したがしかし彼は少し考えはしたがすぐにこう言った。
「専務がやりたいようにさせてあげたらいいと思いますよ。激務だからこそ恋人に会いたいのが男です。」
男性経験の乏しい美鈴にとっては初耳な意見でそうなの?と井川が言う通りに少し心配だが様子を見るしかないかなと思うことにした。
「それよりですね、専務って一人暮らしですよね。」
「そうよ。」
美鈴はまだ行ったことは無いが、鷹崎は帰国時に高層マンションの一室を購入し今住んでいると聞いている。当然生活スタイルを見たことがないのだから自炊しているかどうかなんて美鈴には判断できない。
「なんとなく専務が自炊している感じはしないから食生活の方を心配してあげてみたらどうですか?」
井川君が言う通り確かに何でも器用にこなす人ではあるけど、料理をしている姿は想像がつかない。しかし身近な男性は加奈子の彼氏の結城 大輔だけで彼は料理については料理人裸足の腕前だからつい考えたこともなかった。
「井川君さすがだわ~そうよね。確かに彼は自炊はしないかもしれないし、夜は会食が多いし、その他の日も私と外食だし。」
考えてみればほぼ外食の生活をしている事になる。
「夜は会食なら昼はお弁当もアリじゃないですかね~。」
井川は最近たまに彼女の奈々がお弁当を作ってくれるのが嬉しいから専務も同じかも知れないですよと助言してくれた。
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