最後の嘘

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最後の嘘

 「今日はね、……優人…?」  病室の中は誰もおらず、貴方の荷物も何もなかった。私は病室を出て、通りかかった看護師さんに聞いた。 「あの!ここの病室に入院していた平海優人さんはどこですか?」 看護師さんは私の勢いに少し驚いた後「平海さんなら、今日の朝に退院しましたよ」と言った。  私は突然の出来事に混乱して、その場から動けなくなった。何も知らなかった、何も聞かされていなかった。貴方は、私に何も言わずに退院してしまった。あんなにも信じていた貴方に裏切られた気持ちになり、私の心は一瞬で悲しみで満ちた。  そんな時、貴方が入院していた病室の前で立ち尽くす私を見て、先程の人とは別の看護師さんが話しかけてきた。 「あの〜、もしかして貴方は結美さんですか?」 私は呆然としたまま「はい」と答えた。すると、看護師さんは「ちょっと待っててください」と言ってどこかに行ってしまった。そして、すぐに戻ってきて「これ、貴方に渡して欲しいと言われまして」と言い、私に手紙を渡した。手紙は貴方から私に宛てたものだった。看護師さんが「宜しければ、そちらの病室で読んでいただいても構いませんので」と気遣ってくれ、私はそれに甘えて、貴方のいた病室に入り、ベッドに腰かけ、手紙を読み始めた。
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