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青信号の横断歩道を渡っていた私に迫り来るトラック。
私の腕を引き、私のせいで事故にあう貴方。
到着した救急車で病院まで直ぐに搬送され、手術室へと運ばれていく。
私は「死なないで」と祈ることしかできず、貴方の手術が終わるのを待った。
手術室から出てきた医師は、「命に別状はありません。ただ、回復するまでには時間がかかると思います。」と私に告げた。
死なずに生きている、それだけで私は嬉しかった。もう二度と誰も失いたくないから。
医師の言っていた通り、貴方は1週間程、目を覚まさず眠り続けていた。
病院からの連絡を受け、貴方が目を覚ましたことを知った。
私は急いで病院まで駆けつけ、病室の前まで来た。病室の中で貴方と看護師さんが話す声が聞こえる。
久しぶりに聞いた貴方の声に涙がこぼれた。
まだ、顔も合わせていないのに。
私は心を落ち着かせて、病室の扉を開けた。
(久しぶりの私を見てどんな顔するのかな?)(いつも通り、優しい顔で笑いかけてくれるかな?)なんて、たくさんの期待を込めて「優人!」と貴方の名前を呼んだ。
でも、そんな期待も貴方の一言で崩れて落ちていった。
「えっと……、どちら様ですか…?」
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