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言葉
私は、幼い頃から今現在までの事を全て貴方に話した。貴方は頷きながら、何も言わず、私の気が済むまでただただ話を聞いてくれた。全て話し終わった後、貴方は「頑張ったね」と言った。たった一言、それだけなのに心が暖かくなった。
それからは、どこも悪い所がなくても、貴方に会いに病院へ行くようになった。貴方には、病院の屋上が好きだと嘘をついて。
少しずつ貴方のことを知って、少しずつ貴方のことが好きになっていった。貴方も私と話す時は楽しそうにするから、勘違いしそうになって……
いつも通り、貴方に会いに病院へ行った日。
屋上に向かうまでの廊下で貴方を見つけた。平然を装って声を掛けようとした時、看護師さんが貴方の傍に行き、話を始めた。あまり遠い距離じゃなかった為、話している内容が部分的に聞こえてきた。
「あぁ、結美さんのことですか。」
(私のことだ…)
「はい。どういう関係なんですか?」
「ただの、ここの屋上が好きな知り合いだよ」
(……)
「具合が悪い訳じゃないのに、病院に来るなんて。迷惑なら、ちゃんと言ったほうがいいですよ。平海先生はお人好しなんですから」
(迷惑…か…)
「ハハッ、そうですね……」
(………)
心のどこかで思っていた。本当は、私のことが迷惑なんじゃないかって。それを言えないくらい優しいから、我慢してるんじゃないかって。貴方の優しさにつけ込んで気付かないふりをしていた。
こぼれ落ちそうな涙を堪えて、前を見た時、たまたま貴方と目が合ってしまった。私は貴方から逃げるように屋上に向かった。
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