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人付き合いって面倒だ。
ひとりで良いならひとりが良い。
だけどいくら面倒だからと言って人間関係を無碍にはできないのも否めない事実。
それでも人間、二十年生きていたらそれなりに処世術だって身に付くものだ。
「ねぇ楓花、今夜暇じゃない?」
綺麗に整備された広すぎる校舎を背景に歩いていれば、隣の侑奈はとろんとした瞳を細める。
蝉の声が煩わしくて、早く帰りたい気持ちを押し殺して足を止めた。
「急だな、なんで?」
「サークルの飲みあるんだよね、来ない?」
「飲みかぁ」
「今夜は一色さんが来るんだよ、一緒に来てよぉ、楓花ぁ」
侑奈が今夢中になっている先輩の名前を告げるとその瞳が更に細くなり、掴まれた腕は更にブンブンとちぎれそうな程振り回される。
面倒だ、飲み会なんて見世物小屋に入るのと同じだ。
だけどそろそろ腕が助けてと叫び始めるので、分かった、と動きを制して侑奈を落ち着かせる。
「でもうち、門限あるからそれまでね」
「おっけー。じゃあ、いつも通り、日付変わるまでにね」
お願いします、とお互い敬礼のポーズを取ると、侑奈と別れた。
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