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むしろ、婚約者でもいた方が楽で良かったかもしれない。誰かを好きになるだけ無駄だから。
誰かに素を見せるのなんて、もっと無駄。
金魚の糞の様についてくる、ひとり歩きした常葉楓花のイメージ。
言いふらしていないのに、あたしの事はみんな知ってるときた。これは最早諦めている。
色のない毎日、作り物の笑顔ばかりが上手になる。
ぐるぐるとマドラーでかき混ぜるとカクテルに透明感が増した。
「でも楓花ってお金持ちの癖にセレブ感ゼロだから好感度持てるんだよな」
「セレブ感って何それ。ビームでも出るの?」
「ほら、執事付きの黒塗りの車で送迎されてそうなのに、通学だってバスじゃん?」
「ははっ、なにそれ」
「外面と本音のギャップ凄いしさ」
「本音ばっかり言ってたら、ガッカリさせちゃうでしょ」
「そうかな〜、楓花ってどっちも可愛いんだけどな〜」
「侑奈の方が可愛いよ」
「えぇ、うそ、やっぱり〜?」
なんて、女同士の取り留めのない褒め合いをしてじゃれ合う。
侑奈は大学に入って仲良くなった貴重な友人。
今風のギャルな見た目とは違って情に厚くて友達想いっていうのは、侑奈が歩いてきた道のせいだろうか。
だけどあたしの事を何も知らないからこそ侑奈とは上手くやれた。
"普通"の友人があたしにもやっと出来た気がしたんだ。
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