#00 プロローグ

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「……話って、あたしに何かあったんですか?」 侑奈の隣の男性を見上げると彼は思い出したように「あぁ」と上瞼を上げる。 「あのさ、頼みたいことがあって」 「頼み?」 「今度学祭あるじゃん?楓花ちゃんにイメージガールやってもらいたいんだ」 「イメージガール…」 「モデルとかステージイベントに出てもらうだけで良いんだよね。楓花ちゃんだったら認知度あるし、助かるんだけどなぁ〜!」 一色さんは侑奈に擦り寄り、あたしではなく彼女に「ねぇ」と声を掛ける。 言わずもがな侑奈ときたら「ですよねぇ〜」なんて、緩みきった笑顔で好きな人の肩を持つ始末だ。 誰にも聞こえないくらいのため息を落とし、ぺたりと表情に笑顔を貼り付ける。 「あたしがそれを引き受けても、父はスポンサーにはなりませんよ」 「あ、まじかぁ〜。学祭にリーブスの援助が受けられると思ったのに」 やっぱりあたしじゃなくて、あたしの後ろにある価値が欲しいんだよね。 彼の思惑を理解すると、グラスを傾けて甘いカクテルで喉を潤した。 「て、冗談だよ。これマジで、楓花ちゃんにしか頼めないって思ってるから」 しかし全部が思惑通りには行かず、侑奈の身体越しに覗かせたその顔からは笑顔が消えていて、人あたりの良さそうな瞳を申し訳なさそうに細めている。 ……だけどあたしも素直に譲れない。 「バイトしてるし、無理です」 「ちょっとだけでも!お願い!」 ……執拗いなぁ。 この無意味なやり取りも面倒だし、引き受けるともっと面倒だし……。 「楓花ぁ、どうしても無理?、」 更には侑奈にさえも子犬のような瞳を向けられ、返答に困り果てていた時、 「一色先輩」 耳に、別の声が届いた。
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