雨の日、駅舎にて

5/10
前へ
/10ページ
次へ
「いねつか……?」 「言葉遊びですよ。と言っても、私も気付いたのは何度か読み返してからでしたけど」  手紙を読んだ時、美月氏は更に戸惑った。夫の死と同じタイミングで連絡が途切れたという。それからすぐに名前の意味にも気付けば、次に来るのは、不審と不安だった。  美月氏と違い、金秋氏は仕事柄メールなども使いこなし、彼への連絡に手紙が使われることはまずなかった。  存在自体が異質なもの。言葉遣いから、相手が書き慣れてないこともよくわかる。  そうまでして慣れない手段で、名を変えてまで連絡を取り合おうとするこの娘は、一体誰なのか。  頭の中には、すでに予感はあったという。  だが確信は持てない。人に相談出来るようなことでもない。ともすれば、身内の恥になりかねない。  彼女は筆を取った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加