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「血迷った行為だとお思いでしょう。私もそう思います。けれど他に思いつかなかったのです。妻として手紙を送れば、向こうは逃げてしまうかもしれない。唯一の手がかりを失わないためには、夫の名を騙る他なかったのです」
誠太郎は何も返せなかった。彼女の言葉が、妻の声に変わって頭の中で、まるで自分を責めるように反響する。
真面目な性格なのか、それともよほど金秋氏からの手紙が嬉しかったのか、初峰若菜は、美月氏が成り済ました手紙にも、すぐに返事をよこしたという。
そして美月氏は、夫の名を騙りながら始まった文通の中で、彼女と夫の間柄を探った。
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