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「魔法陣というのは日本の漫画やゲームから定着した呼び方で、古来からあのような紋様は魔法円と呼ばれてきたんです。まぁ、日常的に使うものでも無いですし、普段会話で使う分には意味さえ通じればどっちでもいいんですが」
一般常識からは乖離した無駄知識にも、恵美は一々感心したように相槌を打つ。
「流石はオカルト作家。色々と詳しいのね。そういうことなら、こっちだから付いて来て」
そう言って恵美は歩き出した。
屋敷の中には入らず、ぐるっと裏手に周るのだが、天堂の予想に違わず神楽坂邸の敷地は尋常でなく広かった。屋敷を半周するだけでもかなりの距離が有るのではないだろうか。
「ここよ。この物置で見つけたの」
正面入り口からは洋館に遮られて全く見えない屋敷の裏側。そこにポツンと建つ物置小屋があった。小さな窓がついただけの蔵のような建物だ。
あまり手入れはされていないのか、両開きの重々しい扉には赤錆があちこちに浮いている。恵美は取手を掴むと、体重を掛けて扉を押した。錆びついた扉は耳障りな音を立てながらゆっくりと開いた。窓からいくらか光は入り込むものの、薄暗い。
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