第二幕 ~神楽坂邸へ~

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 中に入り恵美が照明のスイッチを入れた。  明かりが灯る。特に何も無い、ただの物置だ。 「確かにここで見たんだけど、今は御覧の通り。慌てて人を連れてきた時には綺麗さっぱり無くなってたわ。夫にも寝ぼけたんだろうなんて言われるし、散々よ」  自分の証言を信用してもらえないことが随分と不満らしい。恵美は不機嫌そうにぼやいた。 「何か気づいたこととか、その時に感じたこととかありませんか? 些細なことでも構いません」  天堂に問われ、恵美は腕組みしながら当時のことを思い出す。 「床の魔法陣を見て、私怖かったの。背後から月明かりが差し込んで、真っ赤な魔法陣を照らし出していたから、直観的に血だと思ったのよ。でも、嫌な臭いはしなかったわ。なんだか懐かしさを感じるような匂いだった気がする」 「血、ですか」  天堂はその場にしゃがみ込み、物置の床に触れた。どこにでもある板張りの床だ。もちろん血痕などは見当たらない。  しばし考え込んだ後、天堂はおもむろに立ち上がると、真剣な表情で恵美の方に向き直った。 「恵美さん。これから見ること、口外しないと約束出来ますか?」 「な、何? どうしたのよ天堂くん」
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