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相変わらずの糸目で顔立ちそのものは変わっていない。けれど、今までとは違う真剣な雰囲気に恵美は戸惑った。
「答えてください。僕は貴女を信頼して、これからあることをします。それを決して他人に口外しないと、僕の信頼を裏切らないと約束出来ますか?」
「よく分からないけど、信頼してと言われちゃ期待に応えない訳にはいかないわね。いいわ、約束する」
そう言って恵美は頷いた。
その言葉を聞き、天堂はジャケットの内ポケットから一枚の紙と筆ペンを取り出した。縦長い紙に慣れた手つきで文字を書き綴る。
何を書いているのかと覗き込む恵美だったが、紙面は見えたものの文字とも紋様ともつかないそれを読むことは出来なかった。
「お札?」
それは神社などで売ってるお札のように見えた。
札を書き終えた天堂は筆ペンをしまい、その場に座り込むと札を床の上に置いた。
「五行相生。木生火、五主顕現、急々如律令」
口の中で呪を唱える。次の瞬間、札は勢いよく燃え上がった。
「きゃっ!」
思わず恵美は声を挙げた。生じた炎は床の上を奔り、黒い焦げ跡を残して消えていく。炎が消えた後には、黒く焼け焦げた線が床の上に紋様を描いていた。
「こ、これよ! 私が見たのはこれ!」
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