第一幕 ~相談~

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 直ぐに注文の品が運ばれてくる。天堂は口の周りを汚しながらスパゲッティミートソースを貪った。おおよそ三十路を超えた大人とは思えない食べ方だったが、女はその姿を見て笑い出した。 「全く変わってないわね、天堂くん。そのがっつき方。中学時代の頃と全く同じ」  女は珈琲を飲みながら食事の様子を懐かしそうに見つめていた。瞬く間に平らげてしまうと、天堂はミートソース塗れの口元を紙ナプキンで拭う。 「僕みたいな影の薄い奴のことをよく覚えていますね。でも、真宮寺(しんぐうじ)さんも学年のアイドルだったあの頃と変わらずお美しいですよ。おっと、今は神楽坂(かぐらざか)さんでしたね」  神楽坂( )恵美(えみ)。天堂とは中学時代の同級生だ。もっとも、才色兼備で人気者だった恵美と、本の虫だった天堂との間に接点らしい接点は無かったが。 「お褒めの言葉をありがとう。でも、お世辞は結構よ。お肌の曲がり角も過ぎて、もう若くないってのは重々承知なんだから」  謙遜する恵美だったが、天堂の言葉は決してただの世事では無かった。もう三十代も半ばに差し掛かっている年齢の筈だが、二十代でも十分通用するだろう。
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