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「天堂くんの食事も済んだことだし、本題に入ってもいいかしら」
恵美の顔つきが真剣みを増す。それに気づいているのかいないのか、天堂はメロンソーダに口をつけながら頷いた。
「この間、屋敷の敷地内で妙なものを見つけたの。映画や漫画に出てくるような、魔法陣って言うんだっけ。円とか星とかが描いてあるやつ」
魔法陣というのは正確ではない、と天堂は胸の内で呟いた。魔法陣という言葉は造語であり、古来より主に西洋魔術の儀式で用いられてきた円形紋様は魔法円と呼ぶのが正しい。
もちろん、そんな無粋な説明を挟むような真似はせず天堂は黙っていた。この場合は意図が伝われば良いのだ。
「それからよ。敷地内で動物の変死体が頻繁に見つかるようになったのは」
「変死体?」
恵美は頷いた。
「私も詳しく見た訳じゃないけど、処理をした人たちが言うには『何かが食い荒らしたみたいだった』って」
「役場か警察に相談すれば良いかと」
「出来るならやってるわよ」
天堂の至極真っ当な言葉に、恵美は嘆息を漏らし肩を竦めた。
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