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「そりゃ警察に頼めばきっと警官を動員して山狩りでもしてくれると思うわ。神楽坂のお義父様は警察庁の元幹部、重鎮ですもの」
恐らくその通りになるだろう。警察庁の元幹部ともなれば、例え本人が特別待遇を望まなくても周りが勝手に気を遣う。否が応でも大騒ぎになることは目に見えていた。
「そんな騒ぎにしたら怒られるのは私よ。神楽坂の名前に泥を塗るとは何事か、ってね。何か被害が出た後ならともかく、今はまだ気味が悪いってだけなんだし」
ゲンナリとした表情で語っていた恵美だったが、唐突ににこやかなな笑みを浮かべた。
「警察などの公的な捜査機関は頼れない。興信所は信用出来ない。どうしたものかと伝手を辿っていたら、都合の良い知り合いが一人いたって訳よ」
「僕はしがない小説家なんですが……」
困ったように天堂は言い返すも、何故か恵美は得意気に胸を張った。
「恍けても無駄よ。ちゃんと出版社にも問い合わせて、天堂くんはオカルト関係に結構詳しいってお墨付きを貰ってるんだから」
そこで天堂は恵美の生家、真宮寺家のことを思い出した。真宮寺グループは多くの出版社を傘下に有する巨大企業グループだ。どのような問い合わせの仕方をしたのか分からないが、そのお墨付きにも多大な忖度が働いているように思えてならなかった。
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