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髑髏と牡丹と紅蓮華
メガネブスがその右手をブス黒縁メガネのツルへと添える。
そこにはドクロが描かれた小さなボタンがあった。
「メガネブス・ビーム!」
抑揚の無い、然れど何故かよく響く声が、メガネブスのその口から放たれる。
吉◯家納豆スメルと共に。
そして、メガネブスはその人差し指でドクロボタンをポチッと押す。
メガネブスが掛けているブス黒縁メガネのレンズから、目も眩むばかりの光条が、俺とサトシ目掛けて放たれる。
サトシを抱えたままその場を飛び退く余裕を、その時の俺は持ち合わせていなかった。
許せ!と心の中で絶叫しながら、俺は右へと飛び退く。
メガネブスのブス黒縁メガネから放たれた、目も眩むようなその光条が、血の海の中に倒れ伏すサトシへと突き刺さる。
光条は切り裂かれたサトシの体を易々と貫き、その体を一瞬のうちに灼き尽くす。
(サトシ:享年27歳
死因:メガネブス・ビーム)
そして、その光条は、地に敷かれたアスファルトをあっさりと抉り溶かす。
紅蓮の火球が瞬時にその場にて膨張し、そして、弾ける。
凄まじい熱を帯びた爆風、そして強烈な衝撃波とが俺に襲い掛かる。
爆風と衝撃波は、俺の体を軽々と吹き飛ばす。
俺の体は、パチンコ屋のシャッターへと勢い良く叩き付けられる。
俺の体を受け止めたパチンコ屋のシャッターは大きく撓み、ガシャンガシャンと大袈裟な音を立てる。
俺の全身を猛烈な衝撃が貫く。
体中の骨がギシギシと軋みを上げる。
体中の筋肉が、そして内蔵が絞り上げられるような悲鳴を上げる。
「ぐはっ!」
俺は思わず悲鳴を上げる。
そして、地面へと崩れ落ちる。
しかし、メガネブスは、俺に地面へと倒れ込む余裕を与える積もりすら無かったらしい。
目の前に猛烈な殺気を感じる。
薄れかけた俺の視界、その真ん中にメガネブスの無表情な顔が大写しにされていた。
件の「メガネブス・ビーム」を放った直後、メガネブスは俺との距離を一挙に詰めてきたらしい。
ここで勝負を決する積もりなのだろう。
敵ながら天晴れ!
俺はもう、メガネブスの見事な闘い振りを讃えるしか無かった。
「キェーッ!」という怪鳥の鳴き声のような裂帛の気合いととともに、メガネブスはビニール傘の突端を諸手突きにて俺の左胸へと叩き込む。
新幹線のぞみ号に正面衝突された時のような強烈極まりない衝撃が、俺の全身をガクガクと揺さ振る。
俺の体は襤褸屑のように吹き飛ばされた。
そして、マック前の電柱へと叩き付けられる。
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