渚の街のモノクローム(2) ~ハプニングデート編~

1/20
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 「オレはいったい何やってんだろ……」 「何言ってんだか。レイとデートしてんじゃん」 オレはクロとそんな会話を繰り返しながら。レイの運転する軽四の助手席に座っていた。  オレはある港町の駐在さん。歳は今年30になったところで、妹の優菜(ユナ)17歳JKと二人暮らしだ。他に同居人(猫?)姉妹がいる。一人は黒猫のクロ。オレと脳内で話ができる頼もしい相棒だ。  もう一人は白猫のシロ。オッドアイで人を見ると、その人の思考が読めると言う。敵に回したくない姉妹だった。  レイというのは本田麗さん。駐在所近くの診療所に勤める看護師で、街でも評判の美人だ。歳は二十歳。オレより10歳も若い。  つまりオレはその街でも評判の美人看護師さんとデートしていることになるわけだ。別に自慢ではないが、年の差が開き過ぎててつい兄貴目線になるのは否めない。頼むから恨むのは勘弁してくれよ? 先ほどからクロが冷やかしてくるので、オレは、「ちょ、待て待て。歳が離れすぎてるだろ?」  などと言いながら、同じやり取りをしていた。エンドレスで不毛な会話だ。「でも今日は楽しかったんでしょ?それでいいじゃん。ハイ、この話は終わりね」 一方的にクロに打ち切られてしまった。  その時、 「キャーーーーーーー!!!」 レイが悲鳴を上げた。前を見るとタンクローリーの後部が見えた。  ここは峠の頂上付近で、そして急な左カーブ。しかもブラインドだったから、オレたちから見ると、目の前にいきなりタンクローリーが現れた感じだ。  ここまでのワインディングロードを速度をやや上げて快調に飛ばしていたレイにとっては、予想もできなかったろう。  オレは助手席から伸びあがり、レイがほとんど手を放してしまっているハンドルの上部を持ち、左に切ろうとする。同時に右足をフットブレーキに伸ばした。シートベルトが肩に食い込んで、「ミシッ」っとイヤな音を立てたが、今はそれどころじゃない。  オレはレイに、「レイ!一緒にハンドルを切れ!!」 と命令、というよりも一喝した。 話は昨夜に戻る…… 夜本田さんから電話があり、リニューアルした水族館のチケットが手に入ったから、一緒に行こうと誘われた。オレは妹と同年代の本田さんだからと思って、妹も誘っていいか?とたずねようと、「優菜も……」 と言いかけた瞬間、横にいた優菜からオレの背中を、「パーン!!」と叩かれた。「何だ?」 と思ったら、今度は人差し指と中指の二本でヘソのあたりを突いてきた。あと数センチズレていたら、息が止まるレベルの突きだったが、十分に痛かった。優菜はどうもオレと本田さんの二人で行けと言いたいらしい。  そ……そこまで優菜がいうのなら、と思いオレは本田さんに「ぉ……おお。いいよ。何時に出る?」 と答えると、朝9時に迎えに来るという。「え?迎えに?」 と聞き返すと、彼女は新車でドライブしたいということだった。拒否権はないようだな……「(クロ)ちゃん達もね」 と、オプションまで指定してきた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!