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 それから、相良(さがら)が練習している土手には一回も行くことがなかった。  あのわたしの言葉を相良(さがら)が聞いていたか。それは、わからない。けど、問題はそれではないような気がした。  わたしが土手に行かなくなったことで、もともと学校では一言もしゃべらないわたしたちは、あっけないくらいに、なんの接点ももたなくなってしまったのだった。  そのまま、卒業式を迎えて、わたしたちは違う道を進んで。  中学を卒業してからは、相良(さがら)をダシにしてまでわたしが大事にしていたあのちっぽけな世界も、あっという間に壊れて、ミカたちとはまったく会わなくなった。  ちなみに、高校に入って、彼氏もできた。大学でも、社会人になっても、その手の方には困らなかった。……ただし、どの人も、一年以上もたなかったけれど。  あれから、十年以上。  あの土手で安い缶コーヒーを飲んでたわたしと相良(さがら)が、いま、カフェでフラペチーノとドリップコーヒーなんて飲んでいる。  あの時のことを、相良(さがら)はどう思っているのか。そう考えただけで吐きそうになるわたしなんてお構いなしに、彼は、おだやかな表情で口を開いた。
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