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そう言われた相良は、やっぱり、照れくさそうに笑った。
「だいぶ前にね。今日も、娘のスイミングの時間を潰してて。あ、噂をすれば」
「パパー!!」。そう言って、小学一、二年生くらいの女の子が、相良のもとに駆け寄ってくる。「はいはい、お帰り」なんて優しく言う彼は、こんなにも十代みたいな顔をしているのに、やっぱり立派にお父さんだった。
「かわいいね、いくつ?」
わたしの質問に、彼女は右手をパーにして高々と上げる。
「五さい!」
「えっ、そうなの? 大きいほうなんじゃない?」
「あ、うん。この子のママが西原さんくらいあるから、そっちに似たんだと思う」
へぇ……。わたしがあのとき気にしていた身長差なんて、相良の奥さんにとっては、ちっぽけなことだったんだな。そう考えると、なぜだか、口元が緩んだ。
「ねぇパパ、この人だぁれ? パパのうわきあいて?」
「こら、おませさん! 違うよ。パパの、大切なお友だち。
夕夏にもいるでしょう、カズくんとか、アキくんとか……」
「たしかに! でも、リョウくんだけはお友だちとはちょっと違う関係かもしれないけど」
「え、まって、パパ、リョウくんって初めて聞いたんだけど……!?」
そんなほほえましいやりとりに、つい顔がほころびながら……、わたしはこの先、彼が言ってくれた『大切なお友だち』という言葉を、ココロの小箱にそっとしまって生きていくんだろう。あの、金色と一緒に。
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