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『大親友だとお聞きしまして……その……美姫さん……少しお力を貸していただけないかと』
『お力ですか?』
『実はーーさくらが自殺未遂をしてしまって』
『は?』
親友の旦那さんとはいえ、ダメな言葉遣いだったとは思う。が、それとこれとは時と場合が違う。
『さくらは、さくらは大丈夫なのですか?』
『はい、発見が早かったので命に別状はないのですが、こちらの言葉がなかなか通じなくて……』
さくらの旦那さんとは初めて話したが、受話越しの声は疲れているように感じる。それでも努めて冷静に話を続けてくれた。
何かが起きて、彼女は自ら命をたとうとしてしまったらしい。
確かにいつ頃からか連絡を取らなくなってはいた。
仕事や家の事が忙しいのかな、そう思っていたからこちらからも取らないでいたけど、それは私たちにとっては普通の事で、何らおかしなことは無い……。
うーんうーん、その間に何かあったのだろうか……。
思い当たる節がなく、旦那さんからの質問に何も答えられずにいた。
『やはり分かりませんよね……あの、もし良ければなのですが……』
『はい』
『さくらと会ってやってくれませんか? もちろん私は同席しませんから』
『是非ともそうさせてください!』
善は急げ。
時計の針は夕方6時を指していた。
面会時間終了まであと3時間。車を飛ばせば30分で着くか?
『明川病院の705号室です。突然のお願い、本当にすみません』
『詳しくありがとうございます! それに謝ることじゃないのでお気になさらず! では向かわせていただきます!』
『よろしくお願いします』
病院名と部屋番号を反芻しながら、最低限の身だしなみ、そして荷物を携え家を飛び出した。
「頼むからもう少し待っててくれぇ」
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