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彼女はとても笑顔の素敵な女性だった。
何でもそして誰へでも手を差し伸べて、一生懸命になる子。だけど自分のこととなると不器用で、なかなか弱音も吐かないから、溜まりに溜まってしまうストレスを何とか発散させていたほど。
そんな彼女がここまで追い込まれるほどの出来事とは一体。
「あーあーごめん、さくらを泣かせてしまった。泣かないで、はまず私からだね」
そう言って無理くり自分の目を擦り、満面の笑顔を見せつけてみた。
するとゆっくりと、さくらも溢れさせていた涙を減らし、すぅっと息を吐き出してくれた。
「ーーに……ーーーーった」
「なぁに?」
虫の声ほどに小さなそれは聞こえなくて、そっと耳を近付ける。
「美姫に……会いたかった……」
そして再び溢れ出すさくらの涙。
私の使った後で申し訳ないけれど、それでもほっとけるはずもなく、濡れたハンカチでそれを拭き取った。
「うんうん、なかなか連絡取らなくてごめんね。もう話せる、もうずーっと話せるよ!」
うんと頷いて見せてくれた小さなさくら。
またすぅと息を吐き出すと、ゆっくりとまぶたが開いて、暗い瞳が確かに私を見てくれた。
美しく明るかった彼女の瞳は、どこに行ってしまったのか。
それがまた辛くて、泣き出しそうになったけれど、ぐっと我慢して何かを吐き出そうとする彼女の口元に、再び耳を近づけた。
「信くんに、振られちゃった……違う……振れさせて……しまった」
「あー……信くんって、あの信くん?」
今日1番の大きな頷きを見せてくれたさくらは、また1番大きな涙を枕へ染み込ませる。
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