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「なぁ、初恋の人って覚えてる?」
六月二週目の土曜日。仕事から帰ると、わたしの部屋でテレビゲームをしていた幼馴染が、声だけでそう訊いてきた。
ここ二週間、ほぼ毎日仕事終わりに人の部屋に上がり込み、我が物顔でテレビゲームに興じている。しかもそのゲームはわたしのではなく、自分家からわざわざ持ってきてここでプレイしているのだ。いわゆるお隣さんで、生まれてからの付き合いになるので二十六年ほど一緒にいるわけだが、考えていることはよく分からない。
質問の趣旨も分からないが、もう大人なので正直に答える。
「覚えてるも何も、アンタだけど」
小さい頃から一緒にいたので、そうならざるを得なかったのではないだろうか。いつからいつまで好きだったのか、期間は曖昧だけど、確かに初恋の相手は今目の前でコントローラーを握りしめて「くそっ」とか「やりやがったな」とか呟いてるコイツだった。
「ふーん」
訊いといてこの反応だ。帰ってきてから一回も目が合わない。
「アンタは幼稚園の先生だったよね」
「よく知ってんね」
「自分で言ってたじゃないの」
「そうだっけ?」
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