もう少し、話させて。

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ねぇ、覚えてる? 「だいぶ前一緒に旅行、行ったよね。」 私は同居している友達に問う。 「うん、すごく楽しかったよ。 女二人だから、ナンパされないか凄く心配だったね。」 「そうそう、でも何も言われなかったよね〜」 「ホント、よかったよ。」 彼女と話してる時はとても楽しい。 美奈は物凄くいい子で、少し天然で。よく失敗する子で。ほっとけないような子だった。 だからこそ、話している事が楽しかった。 「ねぇ、もうそろそろ、いこうよ。」 「ううん、まだ。もう少し、話そ。」 「もう時間だよ?そろそろじゃないの?」 彼女は急かしてくる。 でも私は、もう少し話をしたかった。 彼女の言う、「いこうよ。」は、 どこかに行くという訳では、ないのだ。 だから、最期くらいは、 ゆっくりと。 「ちょっと前、美奈が私のプリンを食べた時、ショックだったな。」 「あれは、ごめんって!ほんと」 「ほんと、今まで楽しかったね。」 「これからも、ずっと一緒だよ。大丈夫。 離れ離れにはならないよ。」 目の前には、ずっと一緒に暮らしてきた、 私の友達。 ずっと一緒だった、 私の親友。私が1番、彼女の事を分かっている。 だからこそ、不安になってしまって涙が零れてきた。 「そんなに怖いの?大丈夫だよ。今まで2人でこの日をずっと待っていたじゃない。」 彼女が待っている。 目の前に広がる、死の風景。 覚悟を、決めなくては。 パチッ 今日が私の最後。 大人しくて無口でクールな私の、最後だ。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」 痛い、痛い痛い痛い痛い 口が、開かない、こんな私を見ても、美奈は私とずっと一緒にいてくれるのだろうか。 「だ、大丈夫?莉奈。そんな叫ぶほど痛いの!?」 ピアスって、こんなに覚悟いるんだな。
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