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ピンチ!!
「ファタ、これは一体・・・」
ファタを見ると顔が真っ青で呼吸が荒くなっている。
「し・・んぱ・・い・ない。」
全然大丈夫じゃない。
「ファタ、僕のポケットに入って。入らないとシリアルあげないから。」
「わかっ・・た。」そう言ってファタは胸ポケットに入った。
「おや、妖精の女王じゃないか。自ら出向いてくるとは珍しい。それに日本人
の男ときた。」
「誰なんだ。おまえは!!」僕は大声を出した。すごく怖い。本当はすぐにでも
ここから逃げ出したい。
「初めて会う人に随分なご挨拶だね。普通ははじめましてと言って自己紹介す
るものだよ。」
「生き物を無理矢理捕まえるような奴に名乗る覚えない。」
僕は言い返すのが精一杯だ。
「思ったより男前じゃないか。気に入った。教えてやろうじゃないか。こいつ
やらの歌と楽器はプロ並みに上手い。ペットと最高級の音楽が同時に手に入る
わけだ。しかも希少価値が高いと来た。高く売れる。」
こいつら、許せない。僕の怒りは頂点に達した。さっきまであった恐怖もどこ
かにいってしまった。
「とんでもないクズだな。」
クモを踏み潰して進もうとする。あれ、おかしい・・・。足が動かない。足
下を見ると、靴ごと蜘蛛の糸でぐるぐる巻きに固定されている。
「アーハッハハハ。ヒー。おかしい。実に愉快で滑稽な光景だね。特別に仲間
に入れてあげるよ。お世話係にでもなって貰おうかな。大丈夫よ。可愛がって
あげるわ~。」
僕は全身金縛りに遭ったかのように動けなくなった。まるでクモの巣に捕ら
われたチョウチョだ。
「動けなくなったのね。かわいそうに。私の元へいらっしゃい。」
「嫌だ。」僕は反射的に叫んでいた。
「そう。残念だわ。」
そう言うと女はゆっくり一歩一歩僕に近づいてくる。そして僕の目の前に来
るとピタリと止まり、銀の髪を僕の首に巻き始めた。気持ち悪い。なんだこれ
は・・・これは髪じゃない!「この髪はね。私の子ども達が作ってくれたの。美しいでしょ?」
そう言ってクモ女は周りのクモを愛おしげに見つめた。狂ってる。
「何をする?」
「君とバイバイするんだよ。そしたら女王も私のものだしね。君が私のものに
なればこんな思いすることなかったのに・・・。」
僕の首を締め付ける。苦しい・・・。締め付けは強くある一方だ。これはヤ
バイ。もう限界だ・・・。意識が遠のいていく。・・・。
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