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森の中にて
それにしても一時間強歩いているが、さっきからずっと景色が変わっていな
い気がする。それなのにファタは迷わず飛んでいる。どういうことなんだろう?
「さっきから同じ所をぐるぐると廻っているように見える。」
「妖精にしか見えない印があるのだ。決して同じ所ではない。」
言われてみればクモの巣の位置がさっきとは違う気がする。それになんだがク
モの巣の数がさっきより増えている気がする。クモの数も多くなっているよう
な。僕の気のせいだと信じたい。
それにだ、人間がそうホイホイと現れては困る。それにカイが思っているよ
り町より遙かに離れている。」
「一時間ぐらいしか歩いてないのに!?」僕はすごく驚いた。
「時間というのは気まぐれなのだ。」
「カイ、もうそろそろだ。」ファタが嬉しそうに言う。
クモの巣が増えてたのは気のせいではなかった。国に近づくにつれクモの巣は
増えていき、今はナイフでブチブチと切らないと先に進めない。
「ファタ、いつもこうなの?」
「いや、なんだか様子がおかしい。」
「ファタ、僕のポケットに入って!居心地は悪いかもしれないけど。」
「そんな必要ない。」
「あるから言ってるんだ。こんなにクモの巣があるといつ引っかかるかわから
ない。クモの巣処理が出来る僕が行くべきだ。」
本当は今も体中にクモの巣がひっついていてすごく気持ちが悪い。ファタの方
が大変だし。なんかあったときに僕はファタを守るべきだ。
「不本意だが仕方がない。」
ファタは素直に僕の胸ポケットに入ってくれた。歩いていると奥の方に泉らし
きものが見える。
「あそこが国だ。」
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