森の中にて

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

森の中にて

それにしても一時間強歩いているが、さっきからずっと景色が変わっていな い気がする。それなのにファタは迷わず飛んでいる。どういうことなんだろう? 「さっきから同じ所をぐるぐると廻っているように見える。」 「妖精にしか見えない印があるのだ。決して同じ所ではない。」 言われてみればクモの巣の位置がさっきとは違う気がする。それになんだがク モの巣の数がさっきより増えている気がする。クモの数も多くなっているよう な。僕の気のせいだと信じたい。 それにだ、人間がそうホイホイと現れては困る。それにカイが思っているよ り町より遙かに離れている。」 「一時間ぐらいしか歩いてないのに!?」僕はすごく驚いた。 「時間というのは気まぐれなのだ。」 「カイ、もうそろそろだ。」ファタが嬉しそうに言う。 クモの巣が増えてたのは気のせいではなかった。国に近づくにつれクモの巣は 増えていき、今はナイフでブチブチと切らないと先に進めない。 「ファタ、いつもこうなの?」 「いや、なんだか様子がおかしい。」 「ファタ、僕のポケットに入って!居心地は悪いかもしれないけど。」 「そんな必要ない。」 「あるから言ってるんだ。こんなにクモの巣があるといつ引っかかるかわから ない。クモの巣処理が出来る僕が行くべきだ。」 本当は今も体中にクモの巣がひっついていてすごく気持ちが悪い。ファタの方 が大変だし。なんかあったときに僕はファタを守るべきだ。 「不本意だが仕方がない。」 ファタは素直に僕の胸ポケットに入ってくれた。歩いていると奥の方に泉らし きものが見える。 「あそこが国だ。」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加