到着そして問題

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到着そして問題

クモの巣が張り付くのもかまいもなしに走ると急に視界が開ける。僕の目の 前には幻想的な泉が現れる。その泉はまるで宝石のように輝いている。泉を眺 めていると「大変だ。カイ、あれを見よ。」とファタの声がした。 「なんだこれは・・・」 それはひどい有様だった。あちこちにクモの巣が張り巡らされ、たくさんの妖 精がクモの巣に捕らわれている。どの妖精も力を使い果たしたようにぐったり している。ファタは僕の胸ポケットからでると「皆、どうした?何があったの だ?」とすごい剣幕で聞いている。目は怒りでメラメラと燃えているようだ。 僕のせいなのか。僕が昨日ファタが止めたからこうなったのか?今すぐにで も出発しようと言っていたらこうはなっていないのではないか。僕は自己嫌悪 に駆られた。どうしよう、どうしよう、僕は一体どうすれば良かった? 「タ・・・スケ・・・テ・・・。」 とうとう幻聴まで聞こえようになった。どうしよもないな僕は。そう思いファ タを探そうと後ろを振り向くと捕まっている妖精がいる。 最後の力を振り絞り出すかのようにかに「タスケテ、タスケテ。」と言っている。 その姿を見て、僕は我に返る。何をやっているんだ僕は。助けを求めている妖 精がたくさんいるのにウジウジしている場合じゃない。僕は手に持っているナ イフで糸と切っていく。 「に・・にんげん・・・。」 妖精は怯えた目つきで僕を見る。彼女が人間の僕を怖がるのも仕方がな話だ。 「僕は君たちを助けに来たんだよ。」 「う、ウソつきめが。仲間達をどこにやった!」 なんて気が強い妖精なんだ。僕は彼女の足が震えてることに気づいた。いや、 違う。彼女は気が強い訳ではない。彼女は体力的にも精神的にも限界なはず。 気持ちが負けないようにわざと気が強いふりをしてるんだ。 「嘘じゃないよ。僕はファタと一緒に来たんだよ。君はよく耐えた。遅くなっ てごめんね。」 「う、ううう、あああー。」 彼女は声を上げて泣き始めた。胸が痛む光景だ。僕は泣いている妖精を手に載 せ羽に付いている糸をとる。とりあえず糸は全て取った。見ると妖精は体力の 限界がきたみたいで眠ってしまっている。僕は妖精を胸ポケットに入れる。
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