22人が本棚に入れています
本棚に追加
待つこと三分。
返事はない。
おい、またかよ。だけど今はゲームから目が離せない。あと一歩なんだ。あと1ポイント、あと……
『ミッションクリア。ターゲット確保』
「よっしゃ。」
小さくガッツポーズをとる。
家と会社の往復で他に楽しみのない毎日。気晴らしはゲーム。本当なら帰宅後の妻との会話、とか言いたいところだけど。
結婚して三年。共働きの俺らの会話量は日毎少なくなってきている。
畑違いの職種だからお互い興味が無いというのもあるし、まだ子供もいないから共通の話題がない、というのもある、と思う。
「で、何なんだってば?」
そろそろ寝たい。明日も朝早くからご出勤だ。彼女だって仕事がある。機嫌よくお布団に入ってもらえると助かる。
と、再びサトミを見ると。
くー
「何だよそれ。」
奥さんは缶チューハイ片手にソファに頭を持たせかけておやすみになっている。
仕方ないなぁ。
ゲームの電源を落とし、結露でベタベタになってるサトミの手の中から缶チューハイを取り上げ、代わりに飲み干す。
「また話半端にして寝やがった。」
寝室に運ぶべくそっと首の後ろに腕を回してハッと気づく。
彼女の目の下のくまが……濃い。
最初のコメントを投稿しよう!