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「ねぇ覚えてる?」
始まった。酔っ払ったサトミが口にするお決まりの台詞。
「何を?」
俺はコントローラーのBボタンを押しながらやっぱりお決まりの台詞を吐く。
「やだな……覚えてらいの?」
いつにも増して舌の回らない口調。TV画面では俺の火力武器ぶん回しの効果でラスボスがのたうち回ってる。
「だから……何を?」
コンマ1秒だけサトミに目を向ける。ソファに座らず俺の隣に座っているサトミの足元には空き缶が二つ。
既に三本目に取り掛かっている彼女の目には俺にやられてるラスボスが映りこんでいる。俺はため息をついて再びゲームに視線を戻す。
あと一押しでターゲットクリアだけど、ここで万が一サトミがへそ曲げて暴れだしたらラスボス倒すどころか明らかに近所迷惑な事態が起きる。まあそんな事態が起きたことはないけどな。
「なあ、サトミさぁ。お前いつもそこでだんまりになるんだけど、一体なんの事を言ってるんだ?」
だからちょっとだけイライラしながら、でもやんわりと聞き返す。
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