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菜々子は、赤いハンガーにかけてある、自分のセーラー服を見た。ほぼ毎日着続けて、三年目だ。
(カルガモ達の目的地は川だったけれど、私の目的地はどこなんだろう?)
少なくとも母が勧めている高校ではない。
それは菜々子にも分かっていたけれど、今の第一志望をその高校にしていることに自分の意思を何も感じず、恥ずかしくなった。
でも、将来の夢とかやりたいことなんて、特別何もない。母の意見に反対したくても、反対できる理由すら出てこない。
今の菜々子にとって一番大事なことは、友達をたくさん作ること、彼氏を作ってデートをすること、青春を満喫することだった。
今通っている中学校で、菜々子はスクールカーストの最下層にいる。
見た目も性格も暗いとバカにされている。
今の菜々子が思い描く理想の目的地は、
高校デビューをして、たくさんの友達に囲まれ、彼氏とデートしながら、明るく過ごす自分の姿だった。
今までの暗い自分をリセットして生まれ変わりたい・・。
この気持ちが、正しいのか間違いなのか分からないけれど、誰も教えてくれないのなら、
自分で選んだ道を進むしかない。
菜々子は、部屋の窓を開けて、外の空気を吸い込んだ。
夜空を見ると、いつもと同じように月が雲間から光っている。
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