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自分の部屋に入り、扉を閉め、ベッドに横になると、菜々子の気持ちは少し落ち着いてきた。
(何でこんなにカルガモの親子を見ているとイライラするんだろう・・。)
菜々子はモヤモヤする原因を考え始めた。
母ガモの後ろにピッタリとくっついて、一列になり、ひたすら着いていく赤ちゃんガモ達。
それを見守り、応援する周りの人間達。
引っ越しの時だけカルガモ優先の車道。
引っ越し先に辿り着くまで追いかけ続けるテレビカメラ。
カルガモの様子に一喜一憂する母親・・。
何を思い返してもイライラが増すばかりだった。思考はまとまらない。気が付くと菜々子はベッドの上で眠っていた。
菜々子は夢の中でカルガモの赤ちゃんになっていた。赤ちゃん達の一番後ろに並んでいて、先頭にお母さんカルガモがいた。
突然、行列が動き始めて、菜々子も置いていかれないように必死で後に着いていった。
皆スムーズに母ガモに着いていく。菜々子は着いていくだけで、息が切れて、しんどくて、置いていかれそうになる。
「待ってよー!」と声を発したが、母ガモも赤ちゃんガモ達も振り向きもしない。
菜々子は、必死で足を動かし続けるしかなかった。
周りにいる人間達は誰もカルガモの行列など見てはいなかった。
視界にすら入っていないようだ。
車は普通に走っているし、スマホを見ながら歩く人に菜々子は危うく踏まれそうになった。
声援など聞こえないし、川まで誘導なんてしてくれない。
それでも、菜々子以外のカルガモ達は粛々と前に進んでいく。
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