前口上

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前口上

 大学時代、同じサークルに所属する一年上の先輩に、奈神(ながみ)先輩という怪談マニアがいた。  先輩は、決して視えたり祓えたりする人ではなかったが、人から聞いた怖い話を蒐集したり、休日毎に心霊スポットを訪ねたりすることを何よりの楽しみにしている、ちょっと変わった人だ。  そんな変人にうっかり一目惚れしてしまった私は、たびたび先輩の心霊スポット行脚に同行したり、怪談蒐集に協力したりする大学生活を送っていた。  奈神先輩と一緒に怪談漬けの日々を過ごすうち、私は時折、説明がつかないような気味の悪い体験や、不可解な現象に遭遇することになる。  この小説では、そんな私が体験した出来事や、先輩に貢ぐために集めた怪談を載せていく。  なお、登場する地名や人名は仮名に置き換え、個人を特定出来そうな情報についてはフェイクを混ぜているが、このことにより支障が出た場合、責任は筆者である私にあることを最初にお断りしておきたい。  また、この小説を読んだことにより、何か視た。聞いた。あるいは失った。などの障りについてまでは私も責任を負いかねる。  使い古された脅かし文句だと思われるかもしれないが、あくまでも自己責任で読み進めて頂きたい。
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