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踏切
大学時代、私はいくつかのバイトを転々としていたが、一番長く続いたのは会員制ラウンジの黒服のバイトだった。
最初は友人に頼まれて、夏に期間限定で行っているという浴衣祭りのための着付け要員として短期雇用されていた。
夏の終わりと同時に辞める予定だったのだが、店長が同郷であることが分かって目をかけてもらったり、ちょうど黒服が一人蒸発したこともあって、そのままバイトとして採用されることになったのだ。
黒服の仕事は楽しかった。仕事の内容だけで言うと昼間の仕事より圧倒的に大変だったが、頑張れば頑張った分だけ給料に反映されるのが素直に嬉しい。
──それに、年代も職業もバラバラな人間が集まる夜の店は、先輩に貢ぐ怪談を集めるのにもってこいの場所だった。
怖い話を教えてくれるのは、主にその手の話が好きな姐さん達だ。
姐さん達は、昼間は別の仕事をしていて、ラウンジは副業としている人が殆どだった。女優を目指している人、看護師をしている人、IT関係の職についている人、私と同じ大学生もいた。
店のコンセプトの関係で20〜30代前半(に見える容姿)の若い女の子が多く、普通なら全く接点がない業界の怪談も友達に話すような気軽さで教えもらうことが出来た。
今回は、そんな副業ナイトワーカーの一人である美夜さんから聞いた話をしよう。
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